第57章 クリスマスカルテット/アダトリ/ほのぼの逆ハ/大学生パロ
急だった。冷たい大きな手に 手首をそっと掴まれる。リネルはぱっと顔を上げ ヒソカを見上げた。
「なにっ、どうしたの?」
「お友達、なんだけど。他の女の子と同じかと言うとそれは明らかに違うんだ」
「え?なに、どうしたの…」
ヒソカは戸惑うリネルの手首を掴んだまま ほんの少しそれを自分の方へ引寄せた。
そして、明らかに緊張に固まるリネルの耳元に顔を寄せる。低い声で囁いてみた。
「…ヒソ、カ?」
「たとえば他の女の子なら少し強引にでも攻めてやろうって思うんだけど」
「えっ?!」
「リネルにはそういう気すらおきない。なんでだろう?」
「そんなの、私に聞かれても…」
「それなのに キミの事が気になってどうしようもないんだ」
「………、っ」
「その様子じゃイルミにも言われたんだろ」
寒空の下であるのにリネルの頬は熱を帯びる。いつになく真剣な面差しのヒソカの顔を見れなくて、ふいと下を向いた。
ヒソカはすぐに表情を戻し、リネルの手をそっと離した。
「 リネルにはホント調子狂わされるよ」
「……、えっと」
「でも今夜はクリスマスだし。抱き締める、くらいはいいだろう?」
「えぇっ?!!や、ダメ!他の子ともいつもこういうこと、してるくせに」
「リネルがボクのものになってくれるなら2度と他の子には触れないよ」
「嘘!絶対、嘘!!」
思い切りたじろぐリネルの様子が可笑しくて ヒソカはクスリと喉を鳴らす。そっと両手を広げると その手を真っ直ぐに伸ばした。
「何やってんの。てゆーか告白ひとつでどれだけ時間かかってるの」
「イ、イ、…イルミ?!」
「空気読めよ」
バルコニーへの硝子戸が豪快に開けられ、じっとりヒソカを睨むイルミが顔を出す。リネルが咄嗟にヒソカから離れると イルミにひょいと手招きをされた。
「用件終わったなら入りなよ。寒いから」
「え、う…うん」
「折角いい所だったのに」
「ああそう 邪魔した?それは悪かったね ならヒソカは外で1人で続きしてれば?部屋に入って来ないでね」
「ボクの家なんだけどなぁ」
気まずさは増長するばかり。ヒソカと共に部屋に戻った。