第53章 副業/月餅/ギャグ
フィンクスの台詞の後に 横からフェイタンがソワソワした様子で得意気に言う。
「ワタシは“フェイタンズ”がいいんじゃないかと思うね」
『ダサ』
「何か言たか」
『いやごめん何も、つい本音が』
からかうようにフィンクスが話し出す。
「だから言ったろ?そんなんじゃ客入んねーって!やっぱ“マジカルふぃんふぃん”で決まりだな」
『ダサい上にキモい』
「あ?」
『ごめん。脳で処理するよりも口が先に答えてた』
シャルナークがやれやれと溜息をつく。
「お前らは発想がひと昔前なんだよ、もっと響きとか字面とか意識しないと」
『ちなみにシャルの候補は?』
「“シャルnaゲドン★”」
『殴りたい衝動を覚える』
ビジュアル系バンドとしてセンスがあるとは思えない。
ふとした疑問を投げかける。
『大体さ、ライブでこうお客様煽ったりとか…出来るの?』
「そうだなぁ 「お前らの(電波)感度ビンビンかー?!」とかどう?」
『キショい』
「なら「殴られたいヤツ手をあげろー!」はどうだ?」
『古臭いしダサい』
「「耳の穴に熱湯注いで脳まで沸かせ!」とかどうね」
『リアルに想像したら耳が痛い』
どこまでもセンスがない。
彼等にどう引導を渡すか考えていると 彼等の団長が顔を出す。
「お前らこんな所で何してる 仕事だぞ」
何やら気まずそうにソワソワする3人。秘密の副業を画策していた3人を一瞥するクロロ。その様子を横から見ていた。
「欲しい物は力づくで掻っ攫うまで」
「文句を言うなら容赦はしない」
「全てまとめて奪ってやる」
「暴れて死ぬのは本望だろう?」
「いいから黙ってついてこい」
「オレの命令は絶対だ」
あっさり副業への道は閉ざされる。
渋々クロロに連れられてゆく3人。
残念な3人の後ろ姿、そして凛々しいクロロの背中を見つめて ポツリと口にした。
「…バンド名は“幻影旅団”…クロロが仕切るビジュアル系バンドなら売れるかも」
fin