第53章 副業/月餅/ギャグ
「ここだけの話さ。今時もう盗賊なんて流行らないと思うんだよね」
いつになく真面目な顔で言うシャルナーク。
フィンクスとフェイタンは彼に目を向ける。
「近年IT化の目まぐるしい進歩によってシステムやロボットは人口頭脳を持ち自ら知識を吸収し論理性を持ってそれを活用する域にまで来てる。セキュリティ設備もどんどん進化する中 ひたすら強行突破を繰り返し欲しい物を強奪するなんて原始的なやり方じゃこの競争が激化する世の中生き残っていけないよ」
「シャル 小難しく言うな。つまり?」
フィンクスの鋭い指摘にシャルナークの大きな瞳がキラリと光った。
「蜘蛛の仕事とは別に副業を探そうと思うんだ」
「何言い出すね 本気か」
「もちろん。3人いればそれなりの事は出来るんじゃないかな」
「例えば?」
フィンクスの問いに 笑顔を浮かべるシャルナーク。
「各々が得意な分野を活かせる事業がいいんじゃないかと思うんだ」
「なるほど 効率的ね」
「で、言い出しっぺのお前は何が出来るんだよ」
「自分で言いたくないけどオレって顔良し頭よしスタイル良しのハイスペックだし言い出したらキリがないっていうか?でもまぁしいて言うなら情報屋かな」
「性格は最悪ね」
フェイタンの言葉を笑顔でスルーし シャルナークは身を乗り出した。
「ちなみにお前らの得意な分野は?」
「拷問」
「ガチンコタイマン」
「はぁ……だからそういうのがイマドキ流行らないんだってば。でもまぁ総合的に判断するとだね……」
こうして3人の新たな副業が決定した。
◆
『…で、こんな所に私を呼び出したのは結局何なわけ?』
「だから話したでしょ?オレらのバンドの名前を決めて欲しくてさ」
『いや。情報屋 拷問 ガチンコタイマンてキーワードからビジュアル系バンドが導き出される方程式がわからない』
シャルナークは当然のようにその理由を説明する。
「一発屋と言われる奴らが多い音楽業界は言わば実力のせめぎ合いなガチタイマン。作曲やレコーディングに追われるハードスケジュールは拷問の日々。さらには情報収集にて市場ニーズをきちんと把握した上で曲を選ぶ必要もあるよね」
『無理やり言葉を当て込んだだけだよね』
「そう言うなよ!実はな 既にバンド名の候補はあるんだ」