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〈短編〉H×H

第49章 Masquerade/アダルトリオ/乙女ゲ風パロ


「さぁ 華々しいスペクタクルの世界へようこそ…!調律狂いの指揮者が奏でる音色に酔い痴れる時。秘密の戯曲のスタートよ…!」

本当に、思いもよらない事態である。

ざわつき 浮き足立つ会場内には短調の奇怪な曲が流れる。並ぶお酒や食べ物は奇抜な色の物が多い。

派手に着飾る貴婦人も、気取った紳士も。杖をつく髭の老人も、給仕を行うウエイターまでも。

それぞれに取り取りの仮面を纏う。

身分も正体も関係ない空間にいきなりに放り込まれたのに、何故だか少しだけ胸がそわそわ高揚する。

私が歩くと回りの皆が振り返る。パーティーの主役になった気がする。



「きゃあああああああっ」

「何事だ?!」

突如 悲鳴とホールの天窓が割れる音、客たちの悲鳴で会場内がざわついた。

落ちるガラスがキラキラと揺れて見える、私もつい目を瞑る。

そして。次の瞬間。
信じられない光景に目を見張った。

白い手袋をはめた指先でスッと顎をすくわれていた。その人はじっと私の顔を覗き込んでくる。
大きな黒羽が目立つ真っ黒い仮面を付けてるけどこの人は明らかにパーティーの参加者じゃない。何故ならこの人の視線はすぐに私の胸元に伸びている。
勘というものが働いた。

「これが例の名家の宝の宝石か。悪魔の魂が宿るというコイツが表舞台に顔を出す今日この日をずっと待っていた。今宵はお前ごと奪ってやろう」

その人は片手で仮面をズラす。綺麗な目をしたその人は 私に顔を寄せ、囁く声でこう言った。

「……オレが世間を賑わすあの有名な怪盗だと言ったら信じるか?」


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