第41章 幻想/フィンクスメインで月餅/ほのぼの
それなのに。今度は耳に浮かれた悪趣味なメロディが入ってくるではないか。
「あ、フェイタンだ」
ころっと転がる声が紡ぐ同メンバーの名前に フィンクスはまた細く目を開ける。
このアングラな世界にいると交友関係はお世辞にも広いとは言えない、近場の人間が登場人物になるのもわかると言えばわかるのだが 指摘の一つはしたくなる。
「お前な、ちったぁ男を見る目養えよ。学習能力ねえのか?」
「違うよ。フェイタンとはそういう仲じゃない」
それは心底本心だった。フィンクスに真面目な顔を向け ふるふる首を左右に振り、メールの中身を確認した。
「“腹減た”だって。これからうちに来るのかも、私帰らなきゃ」
「帰れ帰れ。死ぬまで同じ過ちを繰り返せ」
「だからフェイタンとはそういうんじゃないんだってば。シャルのせいで傷心な私を慰めてくれる可愛いペットみたいなもん」
「癒しの欠片もないペットだな」
「そんな事ないよ?いつも私のベッド1人で占領するし、物珍しいのか勝手に私の大事にしてる高級入浴剤使ったりするけど、文句言いながらも出した物は必ず全部食べる所とか可愛いよ?気まぐれなノラ猫ちゃんみたい」
「お前に飼い慣らせるとは思えないけどな」
フィンクスからスッと身体を下ろし、即メールの返信をする。
そして ほんの少しだけ、したり顔でフィンクスを横目に見ながら言った。
「……ぶっちゃけさ。ホントは寂しい?私が他の男の所に行っちゃうの」
「いんや少しも」
「素直じゃないなー」
「オレはお前みたいな中古品は好きじゃねえんだよ」
「フィンクスって女に幻想持ってるよね」
「お前だろ。男の現実を知れ」
大きな欠伸をするフィンクスにクスクス高い笑みを残し、軽い足取りでその部屋を後にした。
fin