第35章 sweet lover/イルミ/下ギャグ
「失礼いたします」
部屋の中にお茶を持った使用人がやって来る。ご丁寧にも予定外客人の分まで用意があるようで、テーブルの上には4つのティーカップが並べられていた。使用人はイルミに笑顔を向けていた。
「本日もお美しいですね マリル様は」
「うん」
「いやぁ実に相思相愛でいらっしゃいますね。ご婚礼の儀が今から楽しみであります」
「婚礼だと?!人形と結婚出来る訳がないだろうが」
「マリルの為なら法律も超えてやるさ。今式に向けてマリルのスタイリストやメイク係にその辺色々用意させてるから」
「ははは さすがはイルミ様です。しかしマリル様は本当に絵画と見まごうお方でございます。このレベルでは天界の美の女神の怒りを買ってしまいやしないか、差し出がましくも心配に思えてまして。我々一同も来たる喜びの日までより一層気を引き締めて
「もういい。立場を差し引いても甘やかしすぎだ」
クロロはぴしゃりと言い捨てた。
リネルは人形の前に置かれた湯気の踊るティーカップを戸惑いの目で見ていた。
「あのうイルミさん…お人形はお茶飲まないですよね?」
「うん。でも出されたものを飲む飲まないは本人の気分でしょ」
「それはそうですけど…ええと、その…」
「はっきり言ってやれリネル。イルミ 無駄な事をするな、現実を見ろ」
「もちろん見てるよ。オレは彼女を人形と理解した上で日常を最大限に楽しんでるだけ」
「事実を受け入れて尚そこまで入れ込めるお前はかなりヤバイぞ」
クロロの溜息は深くなる。眉間に皺を寄せたまま 別の質問を投げた。
「………そういえばお前には手塩にかけた弟がいたな。彼は彼女の事をなんて言ってるんだ?」
イルミは手にしていたティーカップを置く。人形の腰に腕を回し、彼女の手の甲に自らの掌を重ねていた。
「ああ、キルにはまだ紹介してないよ。オレに恋人が出来たなんて知ったら動揺して訓練の妨げになるかもしれないし」
「まあ…動揺はするだろうな激しく」
「マリルとは長い付き合いになると思うからそう焦る事もないしね。あれでキルアは兄ちゃんっコだしやっぱりショックは大きいと思うから」
「ショックなのは恋人の存在より相手が人形という点だと言っているんだが」