第35章 sweet lover/イルミ/下ギャグ
ゾルディックの屋敷があるククルーマウンテンの入り口に施錠はない。つまり条件さえ満たせれば誰でも入ることが可能。これを利用しない手はないと先回りをしたクロロとリネルは、失礼にもイルミの部屋の中まで入り込んでいた。
「こっ ここがイルミさんのMyプライベートルーム……っ」
「お前がMyって言うなよ。てゆうかお前らなんでいるの?」
広くすっきりしたその部屋の中には整えられた大きなベッドがある。そこに浅く腰を掛ける女性に一方的客人の目は釘付けになった。
「マリルのことジロジロ見ないでよ」
いや、普通の感覚でいけば見つめずにはいられないだろう。
年齢で言えば二十歳前後と言ったところか、桃色の唇で優しく微笑むのは実に美しい女だった。
愛らしい顔付きの上には 滑らかな白い肌が広がっている。長い睫毛に囲まれたつぶらな瞳は ほんのりと悪戯な色を放ち、随分と蠱惑的だ。さらりと肩にかかる濃茶の髪は触れたくなるような清楚な雰囲気を放ち、襟元の広い淡いブルーのワンピースは程よく身体のラインを強調する。
深く浮き出た鎖骨とは裏腹に、豊満な胸元は窮屈そうで横に寄ってしまう布の皺が見るものの煩悩を鷲掴む。ふわりと広がるスカートは丈が短く、見るからに柔そうな太ももが覗いていた。きちんと揃えられた脚の間から見えそうで見えない彼女の下着を想像してしまうのは男性達の悲しい性と言えるのか、計算された脚の角度も絶妙だ。
つまりは、ドン引きである。
「わあ キュートなお人形さんですね…」
「世に言う“ラブドール”というやつか」
「うん。そうだけど?」
毅然と言い切るイルミは彼女の隣に腰を下ろす。伸ばした片腕でそっと人形の肩を抱き、自身の方に引き寄せていた。
はたから見ればその様は文句無しに恋人同士ではあるのだが………明らかに何かがおかしかった。
「ごめんねマリル 久しぶりのデートなのに。こいつらはすぐ追っ払うから」
「変わった奴だと思ってはいたが相当だな」
「人形なのに、人形なのにイルミさんに触れられた上に うきゃああああああきっキッスまで………っ!!!?」
「一旦落ち着け」
イルミは甘い仕草で人形のこめかみに1つのキスを落としていた。
その様子を引きつった表情で見ながら、クロロは呆れた声を出した。