第30章 彼氏と彼女の事情④/アダトリ/下ギャグ/夢主はイルミの彼女
「………待って。イルミもいける」
「いけないだろ確実に」
「アレでも十代の頃は今よりは爽やかさもあって髪も短かったりして可愛かったんだよ。十代の頃マイズされたイルミならあり、バスケいけるし余裕で許容範囲、てゆーかむしろ超可愛いし萌えるんだけど!」
「やたら推すわよね十代の頃。全く想像不可でなんとも言えないけれど」
「どうしよう…っ!悶絶!」
「知るか」
「シンと緊迫するコートの中。ここぞという場面で試合の流れを変える革命的シュートを あのバスケボール独特のヒュッて音を響かせながら華麗に決めて欲しい…!」
「ボールの描く滑らかな放物線がスローモーションに見えるってヤツね」
「“あのシュートもオレもリネルのものだよ。初めて出逢った時からキミとゴールだけを見つめてた”って言われたい」
「なんだそれ。台詞キモいし鳥肌が立つ」
「マチは失礼だなっ!いいの!」
リネルは小ぶりの鼻をふふんとならした。
別の角度からパクノダの咳払いが響いた。
「で。クロロは?」
「えっ」
「え じゃないわよ。そこまで言うなら当然クロロにもそれ相応の妄想ポジションがあるんでしょう?」
「ええと、…」
「どうなのよ」
「あのですね、…」
「スリーonスリーなんて言っておきながらまさか案がない、……なんて言うワケじゃないんでしょう?」
パクノダは長い脚を派手に組み直し、頬を隠す髪をサラリとかき上げる。
漂う色香と有無を言わさぬ黒いオーラは まさに幻影旅団の極妻に相応しい威圧感を漂わせていた。
「ど、どうしようマチ…っパクがなんか怖い」
「言っとくけどパクは怖いぞ。少なくともあたしの5倍は」
「ひえぇ~マチ、アイディアプリーズ…しるぶぷれ…」
「あたし知らなーい。妄想はリネルの担当だろ」
冷たいマチはそっぽを向いた。
「で?」
「ぅ……」
「私ですら想像し得ないクロロの度肝を抜く妄想像はどうだって言うの?」
「う、う~んと……」
リネルは下手に視線を泳がせた。