第6章 求愛/パリストン/セクハラ/ほのぼの甘
「おー盛ってんなァ」
「ジンさん!助けて下さいよ!」
「ひゃははっ んじゃあニャン娘 後始末は頼んだぜー」
「カンザイさん!見捨てたらサーカス団に売り飛ばしますからね!」
本気でジタバタしても誰も助けてはくれないのだから 12匹にあぶれた猫には既に手に負えない。1人虚しくもがいているとパリストンの眠そうな声が聞こえてくる。
「……出ちゃうかもしれません」
「何がですか!?そこでリバースしたら生涯禁酒ですからね!」
「やだな精液ですよ。リネルさんに触れていたら射精欲求が湧いてきちゃいました」
「なっ…変態っ去勢されたいんですか?!」
「もう、僕を煽るのが本当にお上手だ」
煽るもなにも真剣に拒絶しているというのに勘違いも甚だしい。
後ろからスリスリ頬を寄せられる。ざらつく青髭の感触どころかパリストンの肌はしっとりすべやかであるからまた憎たらしい。耳元で語られるのは間違いだらけの愛の囁きだ。
「子の繁殖力の強さを舐めないで下さいね」
「何の話ですか!!」
「朝まで種付けしちゃおうかなあ」
「……っ噛み殺しますよ?!!!」
牙を剥き出し憤慨してみるも、まるで無意味に流されてしまう。
大きく尖る猫の犬歯を陶酔する顔で見つめながら。パリストンは実に愉快そうに口端を持ち上げていた。
「焦らなくてもどこでも噛ませてあげるのに。……勿論ベッドの上限定ですが」
「んニャあああっ!!!?」
ひょいと容易く身が浮いた。
視界の先はパリストンの締まった尻から続く長すぎる脚、おまけに地面のアスファルトだ。
例えばお姫様みたいな抱き方であれば ないに等しい乙女心が少しでも疼いたかもしれないのに、丸太畜生に担がれたのでは理不尽な怒りは深くなるばかり。闇に溶け込むリネルの漆黒の尻尾は 警戒心で細かく毛を逆立てていた。