第6章 求愛/パリストン/セクハラ/ほのぼの甘
飲んで飲まれて、飲み過ぎて。
この面子、通称“十二支ん”での飲み会はいつもこうだ。あっという間に深夜になりようやく店を後にした。
わらわらわらとひたすら騒がしい一行は何とか外まで移動する。美しい月ですら、干支達の愚行に呆れかえっているようだった。
十二支んの補佐役として彼等の次点に位置するのはコードネーム “猫” の称号だ。それを担うことになり早一年、名前ばかりは立派でも蓋を開ければ猫の実態は無残なものだった。何が悲しくてツッコミを兼ねた飼育役を担当せねばならぬのだ、十二支んは実の所アホが多過ぎる。そう思う度に一人泣きたい思いだった。
「ぐわあああああああのわあああああああ!」
「ピヨンさんうるさいです。卯なら月見て泣くとか慎んでおいて下さい」
「デザートの牛乳ソフトは生乳ではなかった、断じてなかった…」
「ミザイさん、そんなにナマチチがお好きならそういうお店に行かれたらどうですか?」
いついかなる時も毅然とした態度で対応するのが常。猫を真似た黒耳は彼等の小言を拾う為のものではないというのに アンテナは常時ピンピンだった。
そこへ早速悪しき気配。すすっとこちらへ近づいて来るのはほんのり赤ら顔をしたパリストンだ。今や日頃の威厳もなく、実に気色悪い仕草で首を左右にふりながらだだを捏ねていた。
「リネルさん夜はこれからですよ行きましょうよ朝まで、ガツンと飲み明かしましょう!副会長命令です」
「パワハラですアルハラです。お引き取り下さい」
「そんな事言ったって帰りませんよ帰しませんよ。あれご存知なかったかな?僕嫌がる女性の腰砕くのわりと得意なんですよ、試してみますか?」
「セクハラです。檻にぶち込みますよ」
フラつくパリストンに背中からがばりと抱き着かれた。いや、ガッチリホールドされ逃げる隙すら断たれていた。
この男の何が不気味かって、この時間になっても男性特有の不快臭は全くなくむしろ爽やかな香りがする点だ。言い換えればとどのつまり、黄金色の大蛇に締め上げられる感覚しかない。
周りからは助太刀どころか哀れな猫をからかう声ばかりだ。