第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
あれから数ヶ月。
今では互いに仕事があるし その内容は未知で無保険、そんなシャルナークとイルミが顔を合わせる機会は実質殆どなかった。当時は携帯電話なんて与えられていなかったし、相手の連絡先を知る由もない。
便りがないのは無事の知らせ。なんて都合の良い解釈があるが それはあながち間違ってもいない。ある日 イルミは新聞の隅に載る小さな記事を目に留め、そう思った。
不思議ではあるが 直感みたいなものは常に働き、双子の片割れは きっとどこかで この住みにくい世の中を生きているのは何と無くわかっていた。気掛かりなのはリネルの方だった。
約束も何もしてはいなかったが 狭い世界ではひょんなことから鉢合わせになる場合もある。リネルの事が書かれた新聞の切れ端をポケットに入れ 暗い裏路地を音もたてずに目的の人物へ向けて進んで行った。
◆
「やっぱイルミか。久しぶり」
「うん」
軽い口調も明るい表情も少しも変わらないと思う。こちらの気配に気づくや否や すっかり板につくマフィア風の洋装の彼は かけていたサングラスを取り払い 碧色の瞳を向けてくる。イルミは黒い目でそれを見返し、質問をした。
「知ってた?」
「なにを?」
「リネルが死んだ事」
シャルナークは少しも表情を崩さないのだから もしかしたら知っていたのか。もしくは自分と同じく 現状から仮説を立て、同じ結論に至ったのかもしれない。イルミは 自身の確たる推理を話し出す。
「小さな記事だけど新聞に出てた。孤児院出の風俗嬢が暴力団に殺られたって内容の」
「あぁ 見たよ。その記事なら」
「名前は出てなかったけど リネルだって気付いた?」
「んー半々かな。院を出たタイミングやリネルが出来そうな仕事考えたら 可能性はゼロじゃないとは思ってたけど。でも確証ないし実際わからないよね」
「確証ならある」
そう言い切ればシャルナークの澄んだ瞳が より大きく開かれる。イルミは最期に彼女に会った日について 説明をする。