第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
「あの日、3人で院を出た日の事 覚えてる?」
「覚えてるよ もちろん」
「ケーキ食べたよね 苺の」
「そうだね。あんま美味くなかったけど」
あの日と変わらない感想が嬉しくて、寂しい笑顔が深くなる。
自由を手にしたと同時に 犯罪に手を染め平気な顔をしていられるほど変わってしまったのに、味覚は不変であるならば 根本的な部分で彼等は以前と変わっていない、そんな気がしてならなかった。
「……あの苺の味に慣れて 心から美味しいって思えるようになったら 私達はいよいよこの世界に出て一人前ってことかな」
「オレは別に慣れなくてもいいや 他にも食べ物は色々あるし」
「でも、またいつか…3人であのケーキを食べれる日が来るかな?」
「どうかな。おそらくだけどアイツも苺好きじゃないと思うよ」
そうだね、私も同じ。好きじゃないし、好きになろうとも思わない。
そう心で応えてから 叶わないと知る願いを唱えてみる。
「またいつか………3人で食べに行きたいな」
放たれたリネルの声は 夜の雑踏に紛れ込む、きっと誰にも届かなかった。