第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
「サイズはそのコとそんなに変わらない?」
「サイズって…?」
「服。その格好じゃ外で目立つし」
「あ、そっか…」
「今の警察は優秀だからね。バカだけど」
罪を犯した自覚を持て、そう聞こえた。ロングタイプのメイド服では外界では確かに目立つであろう。やや放心していた頭に現実味が湧いてくる。
「にしても派手というか何というか。これはこれで違和感丸出しって感じの服しかないね」
「お嬢様は量販店で売ってる服なんて着ないから 仕方ないよ。みんな一流デザイナーの手掛けるオーダーメイドの服だし……」
「金持ちの趣味ってわからないな」
リネルもイルミの隣に立ち 両手で服を物色する。クローゼット内の整理整頓もリネルも役目であったから所持している服には覚えがある。
見えてくるのは真っ赤なワンピースだ。まるであの日3人で食べたケーキに乗る苺みたい、過去にそんな事を思ったものだ。
「……せめてこれなら。一応無地だし 丈やデザインもそこまで奇抜じゃないし」
「いいよ。急ごうか」
恥ずかしがっている場合でもないので その場でイルミに背を向け着替えを済ます。元の仕事着は 丸めて持ち出し 娘の遺体はクローゼットの最奥に放り込んだ。
イルミに続き静かに屋敷の外に出る。途中タクシーを拾ったりもしながら もうかなり遠くまで来た気がする。いつの間にかここは リネルには馴染みのある明るい夜の繁華街だ。
「ここまで来れば追われても何とか撒けるかな」
「…、うん」
ワイワイ賑やかな街のざわめきを耳が勝手に拾う中、リネルは痺れたままの指先を何度も何度も握りしめていた。
時間をおけばそれに比例し 現実味は増すばかりだ。
先程の娘の映像がどうしても瞼を離れない。脳細胞の奥の奥にまでこびり付いている。
花瓶を介し手先から 腕や肩に伝わる娘の頭蓋骨の感触が。首を絞められ 娘の狂った眼球の焦点が。死体になった瞬間の 鬱血した皮膚と抉れた首の筋肉が。