第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
「ぁ………が………っ、……」
「キミに恨みはないんだけど。ご愁傷サマ」
この状況で抵抗が出来る訳もなく、娘は痙攣しながらイルミの手により絶命した。
目の前のハエを潰しただけ、イルミにはその程度の違和感すらない。イルミは顔を上げると ごく普通の声色でリネルに話しかけてくる。
「こんな所でリネルに会うとは思ってもみなかった。いつからここで働いてたの?」
「二か月前くらいから。住み込みで…ハウスメイドの仕事で」
「そうなんだ。リネル このコに物凄い殺意みたいのあったからつい便乗しちゃったけど、大丈夫だった?」
「…うん…大丈夫…」
小さく震える肩を抱く。イルミは娘の首に回ったままのネクタイを抜き それをポケットにしまった。
「行きなよ」
「行くって…っ どこへ?」
「それはわからないけどここにいるのはマズイ。早く逃げた方がいい」
「でも…イルは?」
不安気に見つめていると イルミは軽やかに腰を上げる。詰まるシャツの襟を緩めながら 部屋の窓に視線を投げた。
「オレも逃げるよ 適当に」
「え、別々に?なの?……」
「その方がいいと思う。犯行現場調べられたらすぐに犯人が複数で誰なのかまでバレるし、一緒にいる所押さえられたらそれこそオレ達犯人ですって言ってるようなモンだし。今日は持ち合わせなくて ついこんなの使っちゃったしね」
「でも、私一人じゃどこに逃げたらいいのか…ねえ 一緒に行こうよっ」
「リスク高いって。リネル一人なら捕まっても最悪 "新入り護衛に脅されてやらされました"とか言い訳出来なくもないし」
「…それを 聞いてくれるようには 思えないんだけど」
「うーん 確かにね。どっちにしてもまたお互い職探しか」
イルミは部屋のクローゼットへ移動する。大きく扉を開けば 煌びやかな衣装が数え切れぬ程並んでいる。リネルをちらりと見た後、娘の服に視線を添わせた。