第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
「この人が 今後私を護衛して下さる方?」
「ああ そうだ」
「もう お父様は相変わらず過保護なんだから」
素っ気なく言うが娘の瞳がキラリと光るのがわかる、その目はリネルに最初に向けられた時と同じ色を醸していた。親の金で雇われた新しい玩具に どの程度の価値があるかを見定める目だ。リネルもイルミも、結局は金で買われただけの 生き人形も同然なのだろう。
「ねぇ あなた 先日政界の先生の奥様達との会合がありまして………」
話題はすぐに元に戻ってしまう。そうなればリネルやイルミはすぐに空気扱いだ、何事もなかったようにまた、家族間で自慢と欲の語り合いが続く。
時々イルミの顔をチラチラ盗み見みてはみたものの 1度も視線が合う事はないまま、長い晩餐は終わった。
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急な登場人物にソワソワした気持ちを隠せぬまま リネルは普段通り就寝前の娘の部屋のベッドメイキングをしていた。ベッドにシーツを広げれば 上質なシルク地が艶やかに広がってゆく。細部を綺麗に整えていると 部屋に娘のソプラノ声が聞こえてくる。
「イルミ あなた強いの?」
「どうだろう でも採用基準は満たしてるよ」
「へえー 見た目はうちの門番の方がよっぽど強そうだけど」
「強さって外見じゃないし」
まさかイルミも一緒だとは思わず 一瞬作業の手が止まった。
護衛という実務詳細不明な仕事を選ぶあたり きっとイルミも今では普通の立場にいないのではないか、そんな考えが胸をよぎる。当然、この場で質問をする事も出来ず 耳だけをそばだてながら 何食わぬ顔で再び仕事の手を動かした。
「まあ いいわ」
娘はリネルが整えたばかりのベッドの上に腰を下ろし脚を組む。なめらかなシーツに歪な螺旋模様が走った。