第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
強張る顔でそれを見た後、シャルナークに目を向ける。彼はいつの間にか普段の表情に戻っていた。
「リネルの中あんまり気持ちいいから、つい。我慢出来なくて」
「…………。」
「そんな睨まないでよ」
「…………。」
「ちゃんと洗っておけば大丈夫だって。怒らないでってば」
腕を引かれ熱を持つ身体に抱きしめられる、額に小さなキスを落とされた。今更そんな機嫌取りに騙されるものかと顔をそらせていると 耳元で児戯なる声がする。
「リネルだって良かったクセに」
「そ、そんな事…っ!」
「もっとしてってねだってきたりさ」
「…!…だって、それは、…っ」
きっと言い合いをするだけ無駄だろう。そういえば昔から、この人は自分の見せ方と人の扱い方が本当にうまいのだ。それを思い出し ベッドから降りるシャルナークの背中を苦々しい表情で見つめた。
リネル自身も疲労に重い身体を起こし皺だらけのシーツから立ち上がれば、ベッドがギシリと音を出す。三流ホテルであるしきっと質が悪いのだろう。そういえば寝具も少し黴臭い。今更そんな事に気づくが、リネルには音も臭いも、むしろ懐かしく思えた。
◆
その後、数週間は過ぎただろうか。
あの日の命に関わる事件はシャルナークに救われたが、もう一切危険を伴う仕事から足を洗えたかと言うとそれはそれで難しく そういう訳にもいかなかった。いつしか誰かが言っていたが、生きるには金がいる。容姿を売る仕事では尚更だ。
幾つか職を転々とはしたが、孤児院を出てからリネルなりに学んだ事がある。
“この世は実にうまい仕組みで回っている”と身をもって感じていた。リスクの大きい仕事程、対価もリターンも大きい。安全が確保される仕事では稼げる額に制限がある。実に釈だが それを認めるしかなかった。
仕事へのモチベーションは 精神面が大きく起因した。無我夢中で悍ましい風俗店で働く日々もあれば、廃れたビルの清掃員をすることもある。選ばなければ仕事はそれなりには見つかるもので、オンナであることは時には武器になることも痛感していた。逆に言えば最終的に行き着くところは結局これしかないようにも思う。今の仕事はまさにその典型である。