第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
「ウチの組にタテをつこうなんざ いい度胸じゃねえか!」
「無事帰れると思うなよ!!?」
「どこのモンだ?バラされたくなきゃそれ捨てな」
先程の音が また素早く男の心臓を貫く。ここでようやく 慌てふためく輩に向かって発せられるのは、シャルナークの至極冷静な声だった。
「口じゃなくて手を動かせばいいんだよ」
1対3を物ともせずにあっという間に勝負がつき 辺りは静音に包まれる。
リネルは 目の前に転がる死体をじっと見つめたままだった。シャルナークは 人間の命を絶つ事、つまりは心臓一点を狙い引金を引くことに少しの迷いもなかったように見える。そういう意味では ただの肉塊と成り果てた彼等がやや気の毒でもある、組織の誰かに命じられてやっただけであろうし あっさり殺される程の悪事だったのかはリネルにはよくわからなかった。
シャルナークは消音銃を宙に数度振り こもった熱を逃がす。消えた命を気にする様子もなく リネルの前に片膝を落とししゃがみ込んでくる。近付くと香ばしい火薬臭が 痛く鼻をついた。
「なんか三流ドラマ並みの展開だったね」
「……っ、…」
「あ、口の横血出てる。大丈夫?」
「………………シャ…ル…なん、だよね…?」
「えっ まさかオレだってわかってなかったの?」
シャルナークは黒手袋をつけたままの手で 顔を半分覆っていたサングラスを下にズラし 変わらぬ綺麗な瞳を向けてくる。にこやかな彼の顔付きを目の当たりにすると 一気に安心感が溢れ 涙が出そうになる。
地についたままの冷たい指先に じわじわ温かい何かが触れる。どす黒いだけの死人の血液が リネルの手のひらを汚していた。
「初めからリネルだと気付いてた訳じゃないんだけど。この辺物騒だしああいうのも日常茶飯事だしね」
「………どっちにしても ありがとう」
「なに?あの様子じゃうまく世の中渡っていけてないんだ?」
「かも…しれない…」
「ったく。しょうがないな」