第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ
初めて渡される自ら稼いだ金は 心にずしりと重かった。ただ、手にはあまりにも軽く 採算や生活を考えるとこのまま暮らしてゆくには無理があると すぐに理解に至った。
第二の我が家としたのは 保証人不要のボロアパートとはいえ、当然家賃が発生する。生きるにはエネルギーが必要で 光熱費だってついて来る、働けば腹も減る。日給で支給される金はあっという間になくなってしまうので 生活を回すには収入源の分母数を増やすしかない。
せっかく得たはずの自由を謳歌する暇もなく、昼夜問わず安い給料のために働き詰めになってしまう。
「…………」
それでも暮らしぶりは一向に潤うことはなかった。身体と精神ばかりが疲れ 厳しい現実を身を持って体験すれば、この世の中は 弱者にとっていかに生きにくく出来ているかが嫌でもわかってくる。
「……強く賢く、か。」
この教えが伝えたかった事の真意、それがわかるような気がした。
◆
「初めまして!……ね、君さ。今のこの仕事で時給いくらもらってるの?」
そんな頃、少しだけ希望の光を見るきっかけになったのは 路上での仕事中にかけられたこの一言だった。いわゆるキャッチや勧誘を行う「夜の水世界の住人」だと話すその男の弁舌に、やや目が眩んだ。効率的に稼げるならばそれこそ賢いやり方であるし、半信半疑なフリをして男の話に耳を貸した。
「簡単な仕事だよ。男の人の話し相手になってあげてお酒を飲むだけ。酒苦手ならお茶やジュースでOKだし。二十歳になるまでは うまく年齢誤魔化してやってあげるから心配しらないよ。うちの店は十代の子も沢山いるし何より今の10倍は稼げるよ!!」
現実に疲れたリネルが転職するには 理由は申し分ない。世に言うキャバクラなる店舗の存在くらいは知っていたし、唯一の友人達が「オンナであるなら好条件を使わぬ手はない」と話していた事も後押しの材料となる。