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〈短編〉H×H

第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ


またしばらく、ぽつぽつ会話をしつつ同じ道を進む。しかしそれは長くは続かない、文字通り もう自由であるのだから目の前には3人それぞれの道が存在する。

事前に確認した事もなかったが これからは皆自由に生きてゆくのが 暗黙の了解だった。スタートラインを踏む為の別れの儀式も シャルナークの提案により終えたし、後は互いの健闘を祈りながら 自らの人生を歯を食いしばって生きてゆくしかない。

都合良く三叉路が現れれば 三者とも胸中は同じのようで、誰ともなくその場に足を止める。最後の挨拶を述べることになる。

「じゃあね。二人とも死ぬなよ」

柔らかい色の前髪を風にあそばせながら言うシャルナークは 相変わらず自信に満ちている風に見える。反面いつになく、その瞳には真剣さを匂わせる色があった。

「ま、生きていさえすればまたどこかで会う事もあるだろうしね」

腕を組みながら 黒眼を向けるイルミが述べるのは、叶うかもわからない小さく淡い希望と言える。

通信機器なんて持ち合わせていないし 本当にこの先会えるのかもわからない。それでも一人に怯え 互いに慣れあっていくだけの人生ならば、それは 今までの18年間となんら変わりはない訳で 彼等の選択肢はこれしかなかった。

「シャル…イル…元気でね。」

不思議と涙は出なかった。第二の人生への旅立ちは 不安と期待と、ほんの少しの寂しさを含んでいた。





自由の身は嬉しかったし これからは自分の好きなように生きてゆける。そう思えば前途洋々、自身の手の中には無限の可能性がある。無知なリネルが そんな妄想を抱くには状況は十分揃っている。

仕事も幾つか模索してみた。登録制の派遣アルバイトにて 路上でビラ配りをしたり、小さな工場で出荷前の部品をビニール袋に詰めたり、スーパーで試食品を配ったり。何もかもが新鮮に見えるろ過装置付きの今のリネルの目には、単純な作業すら特別に思え このまま世の中をうまく渡って行ける気になっていた。

「はいこれ。お給料」

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