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〈短編〉H×H

第26章 強く賢く生きる方法/イルシャル双子設定/現パロ/死ネタ


父親どころか母親の顔すらもわからぬままこの世に放り出され、18年が過ぎ去った。

一応はリネルという名で呼ばれているが この名前も誰が与えたものなのかはよくわからなかった。そんな何も持たぬ存在であるリネルだが、俗に言う“孤児院”なる場所に保護され ここまで育ててもらえたのだから まだ幸せな方なのかもしれない。

院での暮らしぶりは決して裕福ではなかったが 世話をしてくれる優しい保護員や同じ境遇の子供達が常に周りにおり、時には励まし時には叱り、時には頭を撫でてくれた。

物心が着いた頃から 横にはリネルと同い年らしい双子の少年がいた。双子と言っても似ても似つかぬ容姿と性格をしている故、どちらかは愛人の子だの そもそも最初から血のつながりなんかないだの、その人それぞれの勝手な見解が耳に届くのは珍しい事ではなかった。

実際の所、彼等の出生事実はリネルにはどうだって良かったし 突き詰めた所で何かが良い方向に変わるわけでもない。たまたま年齢が同等だったので、仲が良いでも悪いでもなく リネル含め兄妹のように育ってきた。

そんな彼等である、18年間暮らした我が家を出る日も当然3人揃ってだった。世話になった大人に礼を述べると「これからの人生、強く賢く生きなさい。」と、言うのは簡単な助言と共に 笑い皺に涙を滲ませ送り出してくれた。

強く賢く。これからは自分らなりの答えを模索し 自らの判断の元で生きてゆく必要がある。

隔離された安全と引き換えに手に入れたのは、誰にも邪魔される事のない自由である。リスクは増すが 楽しみだって増える。これからは監視もない場所で 好きに生きてゆく権利を持ったのだ。

行く当てもよくわからぬまま 微妙な距離間を保ち、3人は外の世界への第一歩を踏み出していた。

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