第25章 秘め事/社長イルミと秘書夢主/現パロ
そろそろ限界。器用な指先が柔らかく弾くように秘部に触れる。
リネルはイルミを押し返す。普段と同じよう 毅然とした口調で言う。
「社長 いけません」
「なんで?」
「コンプライアンス違反です」
探るように見つめ合う。触れ合ったあとはいつもこうである。自分の中の二つの顔がせめぎ合う、黒い瞳の奥で それを伺われている気分になる。
「秘書としてはまぁまぁだけど女としては最悪だよね」
イルミはリネルから身体を起こす。酒に濡れたワイシャツが不快で 片手で胸元のボタンを二つ程緩め カフスが光る袖口で汚れた口元を拭う。
リネルもすぐさま起き上がる。元いた位置に背筋を伸ばして立ち、乱れた胸元をさっと整えた。
「なんていうか機械みたいだよね 普段から顔も声も殆ど乱れないし。ベッドの中ではどんな声出すのか少し気になるな」
「息抜きをなさりたいならスケジュールを調整いたします」
「リネルと遊んでみたい。試しに一回くらいよくない?」
「ですからコンプライアンス違反です」
「もしかして不感症とか?セックスの時ちゃんと濡れる?」
「答える義務のない質問なので黙秘します」
じっと見上げてくるイルミを見下ろし 少しばかりホッとする。この若社長の後ろを歩ける有能な秘書であることがリネルの持つ些細な自負、その立場だけは全うしたいと常々思う。
「細心の注意を払ってホテルやお部屋を選んでおりますが 大手会社の若社長と秘書に明るくない関係があったと表沙汰になれば 我が社の信用は地に落ちます」
「わかってるよ。でもセキュリティレベルトリプルAのこのホテルにマスコミが入り込めるとも思えないけどね」
「ご理解下さい。秘書のかわりは幾らでもおりますが 社長のかわりは誰にも務まりません」
「確かにね」
イルミはサイドテーブルに置かれたままのワインボトルに目を向ける。殆ど中身が詰まったままであるのにまるで香りが飛ばないワインのラベルに視線を固めた。
「このワインは好きじゃない。2度と出さないで」
「承知しました」
「熟成期間たった1年なんてさ。他にもう少しマシな品種なかったの?」