第25章 秘め事/社長イルミと秘書夢主/現パロ
少し機嫌が悪そうなイルミの反応は想定内、用意してあった言い訳を述べながら少し頭を下げた。
しばし言い黙った後、イルミは仕事中 後ろでひとまとめにしていた長い髪を解く。一日中括られていたとは思えない一切の跡もないその髪は、サラサラと流れ 真っ白いワイシャツに柔らかいのラインを描いてゆく。シャンプーのような香りがふわりと微かにリネルの鼻をかすめる。
「ねぇ」
その声かけにリネルは顔を上げる。真っ直ぐに向けられる黒く大きな瞳を見つめ返した。これからされる事を予想する。
「こっち来てよ」
社内では大勢の社員を統括する有能な若社長にしか見えないが、この瞬間だけは秩序から解放された若く美しい獣ように見えてくるから不思議になる。誘われるようにイルミに近付き わずかに腰を屈めた。
「…社長…」
初めて触れ合ったきっかけは 言ってしまえば軽く酔ったノリだった。今では唇を重ねられるのは 気まぐれな日常と化している。
最初は形式的に触れるだけ。少しづつ範囲を広げ 淡く撫でる風な唇の感触に にわかに目元を細めた。
顔の角度をズラしながら 啄ばむ甘いキスが続く。柔らかい唇が弄ぶように下唇を挟んでくる。互いを確かめ合うべく 何度も唇を重ね合う。
じっと前を見つめれば 簡単に視線が絡み合う。各々の表情を探り合うこの瞬間は、ほんの少しだけ理性が揺らぐ気がする。
「………っ、」
イルミの片腕が首筋に回る。優しく溶かされていた唇を割られ、熱い舌が押し入る。リネルは小さく口を開きそれを容易く受け入れる。それぞれに舌先を撫で合えば 思わず吐息が漏れそうになる。
回された腕がキツくなる。弄りながら口内に侵入してくる濡れた舌に 必死に応えを返す。唾液にまみれた舌先を絡め返せば、クチュクチュ音をたてながら 欲しいままに熱い舌を吸い上げられる。今この瞬間を堪能する。
イルミは刹那 顔を離す。
手にしたままのワイングラスから 酒を一口含ませ 再びリネルに顔を重ねる。唾液と共にぬるくなる液体が口内に広がる、1日の仕事を終えた乾いた喉には 酒が熱く染み渡る。
「ん………っ」
「不味いと思わない?」
「味なんか、わかりません」
「覚えなよ。こんな不味い酒また出されたらたまんないし」