第25章 秘め事/社長イルミと秘書夢主/現パロ
「無能者が多過ぎてホント困るよねうちの会社」
長い足で大股に歩けば、束ねた髪が後ろになびく。イルミはホテルの部屋へ戻るなり黒いスーツの上着をばさりと脱ぎ それを隣に立つ秘書に押し付ける。
「構造改革が必要かも 次の人事どうしようかな。それとも社内制度の見直しが必要なのかな」
指先を使い ネクタイをするする緩める。どかりとソファに腰を下ろし、足を組む。抜き取られたシンプルなネクタイは 秘書に向かって投げられる。
リネルは 開かれたままのイルミの手のひらにログイン済のタブレットを手渡した。イルミはそれを膝の上に置き 指先で画面を操作し出す。
「うわ。何この数字 これは酷いな。やり手だっていうからアノ会社から引き抜いたのに期待外れもいいとこ。今月中にリカバリ出来ないようなら元の会社に送り返してやろうかな」
心に浮かぶ言葉をそのまま全て口にする。 視線をタブレットの画面に固めたまま、秘書に向かって左手を差し出した。
リネルは ルームサービスで注文済みの赤ワインを1/3程グラスに注ぐ。曇りないグラスに指紋を残さぬよう細い部分を持ち それを静かに差し出した。
「問題は山積みだな」
イルミは素早い動作でそれを受け取る。躊躇いもなくワインを一気に口に含んだ。
「……なにこれ 不味いね」
イルミは顔を上げる、ソファ横に立つ秘書にじっとり視線を投げた。
日頃、自分の要求を聞くのが秘書の仕事。好みも予定も社内の状況も 全てを把握してこそ初めて秘書として役に立つ。それなのに今日はどうだろう、これ程までに不味い酒は久しぶりな気がする。数ヶ月前どうしても断れぬ接待時に取引先のお偉い方に連れて行かれた安いバーで出てくるものと変わらない。
秘書は戸惑いもせずに 作り込まれた笑顔を貼り付けたままだった。
「キミが選んだのこれ?コンビニの発泡酒の方がまだマシなんだけど」
「明日は朝一番で株主役会が控えております。時間も遅いので香りの弱いお酒の方がよろしいかと。ご理解下さい」