第24章 唐揚げ白書/シャルナーク/死ネタ日常
唐揚げたった一つを巡る争いはまだ続くようで、一筋縄ではいかない仲間達と必死な自分につい呆れを覚えた。
残りの白米と唐揚げを口に詰め込んだ後、三人は連絡通りに山を去った。きっかり三分後には背中から巨大な爆発音と共に 強い熱風が押し寄せ、乱暴に頬を撫でる。
終わった仕事に興味はないので振り返りもせぬまま 道中を急いでいると、フェイタンが横から話しかけてきた。
「レシピ盗たのはいいにして料理なんて誰がやるか」
フェイタンの指摘は最もである。シャルナークも含めメンバー内に料理なんて真似が出来る人間は一人としていやしない。ただ、当然答えは持ち合わせている。
「パペット作ってオート操作にしてレシピ通り忠実に作らせる」
この能力はこんな時にもとても便利である。
「今日はこの後アジトで打ち上げだろうし。早速作ろうかな唐揚げ」
「おっ!いいじゃねーか!唐揚げパーティーだな」
「どうせなら食べきれないほど作るね」
余程お気に召したのか、仲間達も提案に乗ってくれればやる気も出てくる。そうと決まれば早速、シャルナークはスマホを取り出した。
「……ここから南南東に15キロくらい、ちょうどブロイラー工場がある」
「よっしゃ!ちょっと寄ってくか」
「100羽くらいで足りるか?」
少しウキウキしてくる。絶品唐揚げはこの度の仕事の、オマケと言える拾い物だったが 飽きるまでは何度でも 思う存分堪能してやろうと思う。
「工場にいる人間で人形作ろうかな。ある程度扱い慣れてる奴の方が作業効率もいいし」
「シャルはコックの手配、オレとフェイで食材調達と行くか」
「集合に少し遅れる連絡入れとくね」
一人で食べても美味いものは美味いが、仲間が揃えば更に楽しい食事の場になるだろう。
「やりますか もう一仕事!」
「こういう盗みなら捗るよな」
「コメも欲しいね、どかの農家もついでに襲うか」
地を蹴りながら、シャルナークは考えた。
“キミとの出会いを無駄にはしない。思い出だけじゃ足りなくて、欲しくなったらすぐに手の届く位置に置いておきたくて”
たったそれだけの究極のエゴが 絶品唐揚げの味を記憶だけでは終わらせず、自身の欲の範囲内で半永久的に生き続ける事を可能にする。
これはある種の名誉功績と言えるんじゃないかと思った。
fin