第24章 唐揚げ白書/シャルナーク/死ネタ日常
「……っとに美味ぇな、この唐揚げ」
「絶品ね」
感心を含むフィンクスとフェイタンの声に顔を上げた。
今日はあの娘も不穏な空気を感じたせいなのか、仕込量は絶対的に少なかったように見えたが それでもここへ来た時 調理台上にあるバットには完成済みの唐揚げが幾つかは盛られていた事を思い出した。
「あー!コラ!!オレの分も残しておいてよ」
急いで駆け寄るが少し遅かった。あの唐揚げはあっという間に 残り10個まで減っているではないか。
ひょいひょい唐揚げを口に放り込むフィンクスの向かいで、フェイタンが睨みをきかせていた。
「オマエさきからバクバク食い過ぎね。残りは自重するよ」
「あぁ?フェイはチビなんだし一個でいいだろ」
「死にたいか」
「闘るか?」
「闘るなら外にしてよ。そもそも元々はオレが目を付けた唐揚げなんだから」
「シャルは前回食べてるしレシピも盗たからここであえて食べる必要ないね」
「ん、フェイに同感」
「おかしいって!」
たかが唐揚げ、されど唐揚げ。食べ物の恨みは怖いと聞くし 男三人はいつになく真剣だった。
誰かが「白飯が欲しい」と口にすれば目線は大釜に集中する。蓋を開けてみれば 炊きたてご飯が優しい曲線の湯気を立てながら誘っているではないか。
皿なんて洒落た物はこの店にはなさそうなので、プラスチックの弁当容器に数日前のヤシャ盛りを真似て飯を盛り とりあえず一人3個づつの唐揚げを乗せた。
配膳が終われば スタート合図も意思疎通もないまま、早食い対決がスタートする。
途中、シャルナークの携帯が震える。口内の物を急いで胃に流した後 電話に出れば、案の定業務連絡でそこからは仲間の声がした。
フェイタンが横目を向けてくる。
「……電話 シズクか?」
「うん。目的達成 並びにここの後始末準備も万全だって」
「確かフランクリンが盗ってきたダイナマイトで全部吹っ飛ばすって話だったよな?」
「うん。あと3分で爆発するから山降れって」
3人とももごもご口を動かしたまま、シャルナークはしらっとした顔のまま黙って最後の一つに手を伸ばした。
「させないね」
「抜け駆けはナシだろ」
「……はぁ 目ざといなー」