第24章 唐揚げ白書/シャルナーク/死ネタ日常
全てが推理通りに進めば気分が良いものだ、嗚咽を漏らす娘に向かい シャルナークは悪戯に口端を上げた。
「とまあ、ここまではボスの目的なんだけど」
「……っ」
「オレが今ここにいるのはまた別の個人的目的なんだよね」
「……な、何が、……?」
一気に娘までの距離を埋める、恐怖に固まる娘の瞳を覗き込む。
絶望と憎悪に支配された人間の目は 悪くはない。シャルナークは満面の笑みを見せた。
「あのおじさんの言うとおり、キミの唐揚げの味がどうしても忘れられなくて」
「……え……、…」
「違った。キミのおじいさんの味か」
「……ッッ___っ、」
震える身体を目の前の大きな男に包まれた次の瞬間、耳の後ろからボキリと聞いた事のない音がした。
耳に心地いい流れるような話し方をする男の声がぱたりと途絶えた。何が起きたのか、どうなったかのすらわからぬまま、娘は絶命していた。
手を離せば子供並みの身体はどさっと床に転がる。シャルナークは亡骸を無視したまま、物がごった返す店内を見渡した。
すぐに視界に飛び込んでくるのは 予想通りの小さな箱だった。あまりにもシナリオ通り過ぎて張合いがないくらいに思う。シャルナークは金庫を見ながら、仲間に支持を頼んだ。
「フェイ あの金庫開けてよ」
一部始終を黙って見ていたフェイタンはスッとそこへ近寄った。
「金が欲しいならメガバンクでも襲た方が早いね」
「違うよ。オレが欲しいのは金じゃない」
「じゃあ何か」
「ここの唐揚げ屋の“レシピ”だよ」
にんまり微笑むシャルナークの答えと同時に、フェイタンの剣が素早く金庫を半分に割いた。
「……やっぱり!あったあった」
油染みと調味液で汚れ 手垢まみれのノートが一冊、それに子供の小遣いかと突っ込みたい程度の金が金庫から顔を出した。
シャルナークはすぐさまノートを拾い上げパラパラと中を見てみる、注釈や書き損じばかりで何度も何度も試行錯誤を繰り返したことがそこからもひしひしと読み取れた。
お世辞にも読みやすい状態ではないが この程度であれば解読も容易いだろう、シャルナークは満足そうに口元を綻ばせた。