第24章 唐揚げ白書/シャルナーク/死ネタ日常
ここはやはりメインからだろう、添えられていた使い捨てフォークで 1番大きな唐揚げを突き刺した。
「美味っ」
シャルナークは大きな目を更に大きくする事になる。空腹というスパイスを差し引いたとしても、無意識にそう言っていただろう。
外はサクサクで中は熱々、鶏の本来の旨味を引き出す揚げ具合が絶妙なのか ジューシーな肉汁が溢れ出てくる。加えてやや濃い目の味付けが憎い程に食欲をそそる。白米を豪快にかきこめば またいい具合に肉が食べたくなる。
「…こんなに美味しい唐揚げは初めてかも。罪なトリだねー」
突き刺した二個目の唐揚げと目線を合わせ、褒め言葉を囁いた後 大口でかぶりついた。カリっと唇に触れる食感と油の温度に誘われ 残りを一気に口内に放り込む。荒い咀嚼の後に待っているのはふんわり炊かれた白米である。
食の連鎖は止まることはなく、繰り返せば繰り返す程 ますます加速度を持つようだった。
「…………ふう」
シャルナークは山盛りの弁当をたった数分でペロリと平らげた。
口を尖らせ細く息を吐く。長い前髪が揺れ いつの間にか俄かに汗ばんでいた額にふんわり涼しい風を感じた。
規格外の内容量に比例し胃が膨れ、さすがに少し苦しいくらいであったが むしろそれが小気味いい達成感でもあった。
「ん~ しばらくはご飯いらないかも」
空になったプラスチック箱をその辺りに放り、大きく伸びをした。
確かに美味い唐揚げであったが 冷静に分析すれば唐揚げはあくまでも唐揚げである。鶏肉に衣を纏わせ油で揚げただけの単純料理である事に変わりはないし あの男の言うほどの中毒性はないように思えた。
空腹が満たされれば途端そう思うのだから ヒトとは本当に現金である。
「よーし!あと二日頑張るか」
聞いてくれる相手もいないので 自身にそんな喝を入れた。
相変わらず気温は低いしここは寂れた雰囲気である。状況は何も変わらないのに さっきよりは気持ちは幾分も前向きであるし 冷え切っていた身体は今では熱いくらいにポカポカしていた。