第24章 唐揚げ白書/シャルナーク/死ネタ日常
納得のいく理由を聞き出し 実に良くある茶番劇だと感想を持った。ありがちな感動実話もこの鉱山には至極お似合いだ。
「……新入りさんだそうですので二つおまけしておきますね」
「ああ?!俺ん時は一つだったぜ いくらこの兄ちゃんが二枚目だからって嬢ちゃんそりゃあ贔屓だろが」
「そんなんじゃないですよ。山を削るのは体力勝負なんですから若い方には特に頑張ってもらわないといけませんし」
男のヤジをさらっとかわし、娘は大釜の蓋を開ける。ふわっと舞う湯気の元、白米を豪快に盛り出した。
「あ、ご飯大盛り出来る?」
シャルナークの言葉にくるっと振り返る娘よりも先に 男が解説を挟んできた。
「兄ちゃん兄ちゃん ここじゃあ大盛りは当たり前でよ、あるのはオニ盛りかヤシャ盛りだ」
「どっちが多いの?」
「ヤシャ盛りに決まってんだろ」
「じゃあヤシャ盛りで」
「はい!わかりました」
男の言う決まっている、の意味は少しもわからないが オーダーを受けた娘は器用に弁当を完成させてゆく。
「500ジェニーです」
価格も実に良心的だった。今日はまだ作戦遂行の日ではないので大人しく金を払い ビニール袋に収まる弁当を手にその場を歩き出した。
「どうもありがとうございました!」
「兄ちゃんよ あまりの美味さにチビんじゃねーぞォ!」
「うん。気をつける」
うまい料理に舌鼓することはあってもちびるなど聞いた事がない。頭で冷静な答えを返した後、シャルナークは愛想笑いを残してその場を去った。
シャルナークは元の場に素早く戻り岩肌に腰を下ろす、胡座の上に例の弁当を乗せた。
二人前は軽くありそうな重量のそれはほかほか暖かく、プラスチック容器の蓋が閉まらないくらいに白飯が詰まっていた。
早速蓋を開けてみる。見た目は想像通り、品の欠片もないその弁当はパンパンに盛られた飯と大粒の唐揚げだけで9割以上を占めていた。申し訳程度に 鮮度の良くなさそうな緑の野菜とふっくらした出し巻き卵が小さな隙間を埋め、ご飯には少しのごま塩がふられていた。
気温が低いせいもあるだろうか、テイクアウトにしては不自然なくらい 柔らかな湯気が踊っていた。