第4章 パーミッション/イルミ/微甘/微裏
「…忘れてた。外してくるから少し待ってて」
この先の時間の為にも取り払うべきと判断し 諭すようにイルミの頬を撫でた。キメの整う白肌は月明りの中でも一点の歪みもなく滑らかだった。こうしてやっと触れる事が出来たのに離れるのが惜しくなってしまう。
リネルは自ら瞳を閉じそっと顔を近づけた。微かに触れる唇は柔らかくほんのり暖かく 物足りなさが増えるばかりだ。後ろ髪を引かれながら リネルは一旦顔をあげた。
だが、逃げる事を簡単には許してくれないようで イルミの方から引き寄せられる。啄ばむように優しく唇を合わせてくるイルミに 少しの困った表情を向ける。
「……待っててってば」
「オレが取ってあげようか」
「え…っ」
驚く声はすぐに飲み込まれてしまった。
半端に開いたリネルの唇の間から 器用に舌が押し込まれる。誘惑するかのごとく舌の先を舐められた。柔らかく湿った刺激に瞳が揺らげば、またチリチリと右眼に微小な痛みが走る。
離れるのが名残惜しいのはきっとお互い様。
舌をくるりと進めてくるイルミの誘いに耐えられず、おずおずと自身のそれを差し出した。つんと弾かれ絡め取られ、すぐに深く交じり合う。脳内にまで染み出す快感に唾液が滴り止まらなくなる。たかだかキスに翻弄され、夢中になってしまった。
「んっ、…ふ…」
無意識に、両手がイルミの服に伸びた。張りのある布地で仕立てられたシャツの襟を掴み 必死で顔を引き起こした。
こちらはずっとおあずけを食らっていたのだ、素直になるにはもう少し時間がいる。そう決めつけリネルは潤む視線を斜めに外した。その気はほどほどない建前を先行させてみる。
「あんまり…激しいのはダメ…」
「どうして?」
「だって後で…会場戻るかもしれないし…メイク直すの、面倒だし…」
大きなイルミの掌はいつになく優しく頬を包んでくれるのだから すぐにでも全てを許容してしまいたい錯覚に陥った。リネルの困惑は深くなるばかりだ。
またも指の腹が撫でるのは右眼の目尻付近、そこへ二本指を近付けられればさすがに身体が警戒を示す。
「先に取っておこうか」
「いいっ…こわい」
「大丈夫だよ」