第21章 転生りんね/アダトリ/高校生転生ネタ/日常
クスリと笑うヒソカに、フンと冷たく目をそらせて見せる。
話題が切れれば またすぐに無言になる。ぼーっと目の前を眺める。
何をするでもない時間、どこまでも退屈な日常である。
それでもクロロとヒソカの頭の中は手に取るようにわかる。
時間が止まったかと思う程ゆっくりなこの平面世界。針山の上を歩くような当てのない以前の世界。
17年も経つ今でも そのギャップを埋める方法がわからないでいる。
リネルはかつて 「除念師」としてその名を各国に馳せていた。その依頼は世界を代表する有名能力者から 裏世界の輩まで様々で、いつしかクロロやヒソカとも知り合った。
それが今ではどうだろう。
あれだけ緊迫の空間を生きてきたのに、今では喧嘩っ早い双子の兄がいる ただの平凡な女子高生でしかない。
本当の自分は何なのか わからなくなる。
「あ、イルミだ」
リネルは近づく気配に振り返る。
3人など視界に入らないと言いたげなイルミは 片手に持った参考書に目を落としたままである。整えられた短い黒髪が 今では随分と優等生に見える。
「待てよ イルミ」
ヒソカはスッと立ち上がる。イルミが手にする参考書を片手で奪い 絡み同然に拳で殴りかかる。
イルミは涼しい顔のままヒソカを素早くかわした後、ヒソカの手から参考書を取り返す。
「ククク、……フられちゃった」
「血ぃ臭。どいてよ」
「イルミ どこ行くの?」
「塾」
現在 高校三年生、傍目には受験生というやつである。
イルミ
-リネルにとってはかつてのイルミだが-
この世界を生きていかなければいけない以上、彼のやっていることが1番真っ当だとは思う。
ただ、1人だけそこに溶け込み 気取った顔をされるのは面白くない。表情のない顔を下から覗き込めば、昔と変わらぬ黒い目で じっと見つめ返される。
「なに?」
「ホント真面目だよね昔から。仕事はともかくとしてさ、よく勉強なんかやる気になるよね」
「勉強も暗殺も大差ないよ。必要な知識を頭に入れて後は随所で実行するだけ」
「今更勉強しなくてもそこそこ成績いいくせに」
「暗殺に比べれば勉強の方が汎用的で簡単だしね」