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〈短編〉H×H

第21章 転生りんね/アダトリ/高校生転生ネタ/日常


いつもと変わらぬ日常に今日も溜息が出る。

放課後。
屋上への階段を駆け上がり 扉を開け外に出る。普段鍵が掛かっていて生徒は出入り出来ないが この時間は空いている可能性が高い事をリネルは知っている。
校庭から聞こえる野球部のバッティング音と太い掛け声に耳を傾けながら目的の人物の姿を探した。

「……いた。クロロちょっと来て」

「見てわからないか?忙しいんだ」

「暇そうにタバコ吸いながらつまんなそうな本読んでるようにしか見えない。生徒会長のくせに何堂々と喫煙してんの?!」

「勝手な推薦でオレを選び投票したのはこの学校の連中だろ」

クロロはリネルに目もくれない。
本をバサリと無造作に置き 屋上のフェンスを背もたれにする。片膝を立てたまま 頭を深く預ければ 自然と顎先が空を仰ぐ。咥えたままのタバコを口先で退屈そうに遊ばせると、そこから青白い煙が揺れる。

クロロの目鼻立ちが目立つ顔が生む表情も、黒髪から覗くどこか虚ろな目の色も、この日常に辟易した様子をあからさまにしている。首の上まで詰められた学校指定のネクタイが似合うようでまるで似合っていないと感じる。

クロロの、
-リネルにとってはかつてのクロロだが-
学生服の白いワイシャツの袖を乱暴に引っ張った。

「ヒソカがまたケンカしてる。止めて」

「たまには自分で仲裁したらどうだ。以前のお前はもっと能動的に働いていた記憶があるが」

「私は戦闘向きじゃないし今はただのか弱い女の子だよ」

「反吐が出る程つまらない女になったな」

「もういいから早く来て!ほっといたらあのバカはマジで殺りかねない」



学校近くの川原、広い高架下。
ドラマにありがちな光景は案外身近なもので 今日もそこからは聞き慣れた殴り合いの音と人間の苦しげな嗚咽が聞こえてくる。

「もうちょっと愉しませてくれると思ったのに」

「て、め……ッ」

「そっちの君たちはもう終わり?」

「クッソぉ……、」

「ククッ、張り合いないなァ」

見たところ今日の喧嘩相手は何処かも知らない他校の不良達。1対5、それでも明らかに勝負はついている。なのにまだまだ濁った殴り蹴る音が止みそうもない。

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