第20章 愛玩人形/イルミ双子妹夢主/16歳時点/日常
「助かったよ」
そう言うイルミに これは貸しだと打診するか迷ったが今回はやめておいた。別にイルミの手助けをしたつもりはないしアルカが監視下に置かれる事に安心する思いはあった。そしてここから先はリネルが案ずる領域ではない。アルカをどう調査しどう扱うかは 親が事細かに決め打ちをしている筈だ。リネルはゆっくり立ち上がり 親子くらいの身長差がある2人の後ろ姿を見送った。
「ねえね、んっ」
下から両手を伸ばし抱っこをせがむカルトを抱き上げると、キルアがスカートの裾をぎゅうと掴んでくる。
「リネル姉 アルカはどこ行くの?楽しいところって?」
納得がいっていない瞳をしているキルアを見下ろした。キルアの感の良さは弟の中でも随一、怪しまれぬよう無表情のまま真実を述べる。
「私もわからない。パパかイルミに聞いてみて」
「教えてくれんの?」
「どうだろう、わからない」
「あーあ~ もうアルカとお願いごっこ 出来ないのかなあ」
口を尖らせるキルアに 張り付けただけの下手な笑みを返した。念の範疇を超える力なんて封印するか破壊するか、主導をとって完全制御するかしないと 後々取り返しがつかなくなるかもしれない。一先ずは 秘密の子供部屋へ幽閉するのが最良であるのは明白だ。不気味に映るリネルの横顔を ミルキは嘲笑と共に観察している。
「姉貴さ」
「なに ミルキ」
「そんなだから姉貴はアルカにお願い聞いてもらえないんじゃない?」
「私?ないよ お願いなんて」