第20章 愛玩人形/イルミ双子妹夢主/16歳時点/日常
操作の念にしろ花のアップリケにしろ 単純な子供騙しが優しさになるのかは疑問だが リネルにすればそんなことはどうだっていい。出来るだけスムーズにスマートに、望む結果が得られるのならやり方はなんだっていいだけの話だ。
リネルはゴトーに背を向け部屋を縦断する、黒髪が肩を伝いゆるやかに流れてゆく。
「それ アルカに返しておいて」
「いいえ リネルお嬢様の手からお返し下さい」
ゴトーの反論に対し ぴたりと真っ直ぐな視線を向けた。それにしても今日のゴトーは逐一感に触ることばかりを言う。無表情のまま 立ち尽くしているうちに ゴトーは軽やかに立ち上がる。丁寧な会釈を見せた後 リネルの部屋を去ってしまった。
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翌日。例の部屋にてリネルが胸に抱くフランソワを見るや否や、アルカが大喜びをしたのは言うまでもない。リネルが草の絨毯に座り込めば すぐに幼い弟達が寄り付いてくる。ミルキに至っては本日もゲームに夢中のようだ。
「フランソワ 直ったの?!」
「“うん。リネルがちゃんと直してくれたの”」
「おねえちゃんはホントに魔法使いなんだね ありがとう!」
ポーズを決めるフランソワを目で追いかけた後、アルカは満面の笑顔をくれる。この家の中で 最も上手に笑うのはアルカであるといつも思う。あどけない仕草も表情も この家の中では浮いてしまうほど眩しいの一言に尽きる。
「ねえフランソワ 今日はみんなでおままごとしようよ!」
「“うん。いいよ”」
「じゃあフランソワがママ。おにいちゃんとあたしは子供。カルトちゃんは赤ちゃんね。パパ役は…んーと、ミルキおにいちゃん」
「あー パス パス パース!」
「“パパはお仕事でお出掛け中よ”」
はしゃぐアルカは本当に嬉しそうで キルアもつられてとても上機嫌に見える。いつも話題の中心にいる明るい太陽みたいなコ、とはこういうとこを言うのだろうか。
「フランソワ……じゃなくってママ!今日の夕飯はなあに?」
その無邪気さが末恐ろしい。この血塗れな屋敷の中で こうも真っ当に笑えること自体、やはりアルカは異常であると思う。