第20章 愛玩人形/イルミ双子妹夢主/16歳時点/日常
年齢に比例し肉感を増してくる弟は隣に置いたスナック菓子を音を出しながら食べていた。くちゃくちゃ咀嚼を繰り返しながら“爆弾搭載のロボット兵器みたいのにしてやる”と口を歪めて言うものだから なるほど、と納得をしなくもなかった。
フランソワは掛け軸のある台の上にぴょんと飛び乗った。愛くるしい動作でもって ぺこりと深いお辞儀をする。
これはもちろんリネルの操作能力によるものだ。リネルが五体の揃う個体と認識する物に対し、直接触れ念を送り込む事で その物を自由に操作することを可能にする。原則、元の物が持ち得ない力の発動(例 フランソワは話す事が出来ない)は不可能だが それでも特に不都合はなかった。人間は非常に有能であるから自殺は頭容易いし 凶器や機器を扱わせることも難しくはない。
そう言う意味ではミルキはいい着眼点でもってアドバイスをくれた。例えば 単細胞レベルの綿人形が自らの存在を消滅させる為にはどうすれば良いのかをふと考えた。中から加圧を与えれば自己破壊くらいは可能なのだろうか、単純に興味を持つ。
「“いまからみんなにすごいの見せてあげるね”」
両手を広げたフランソワのショータイムがはじまる。ワクワクした面持ちでぬいぐるみを見つめる弟達の後ろで リネルは想像をより具体的に膨らませる。
“壊す 破る 血が出る 破裂させる 破壊する 切り裂く 毟る 縫い目をほどく 縫い目を切る 穴を開ける 開けさせる ハラワタが出る 抉り取る 削ぎ落とす 突き破る 殺す 爆発する 引き千切る 爆発する 爆発する 爆発する 殺害 爆発する 爆発させる 爆発爆発爆発爆発爆爆発爆発爆発爆発”
ピンときたイメージが正解だったかは不明だが 上手くはいったようだ。乾いた破裂音とともに白い綿が舞い散った。フランソワの身体の中心部、ちょうど心臓の位置する場所には5センチ程の穴が開き フランソワは仰向けにぱたりと倒れてしまった。リネルは一度だけ大きく息を吐く。目元と指先がやたら熱いのは 下手に意識を集中させたせいだろう。
「へえー なかなかやるじゃん」
関心した声を出すのはミルキだけ、それも至極もっともだ。
「あ、フランソワ…フランソワが…」
「なにすんだよリネル姉!アルカの大事な人形なのに!」