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〈短編〉H×H

第20章 愛玩人形/イルミ双子妹夢主/16歳時点/日常


ふわりともたげたリネルの右手が撫でるのは愛らしいクマのぬいぐるみ“フランソワ”だ。ここ最近、アルカの一番のお気に入りらしく幼い弟達と遊ぶ時にはどこでも一緒に付いてくる。本日の遊び場であるジャポン様式のこの部屋においても例外ではなく、草で織られた固い絨毯の上にフランソワはちょこんと座り込んでいた。そこへ腰を下ろせば弟達が回りをぐるりと取り囲む。ぬいぐるみの魂を手中に引き出すよう じっと意識を集中させた。

「リネル姉 なにするの?」

大きな瞳で覗き込んでくるのは4つになる三男のキルアだ。無言のままキルアと視線を合わせた後、フランソワに送り込んだ 操作の念を発動させる。残念なのは人形に発声器官がないこと、仕方なしに自らの地声で抑揚なく自己紹介を付け加えた。幸いにもリネルの高い小声はフランソワにはよく似合っている。

「“こんにちわ。わたしのなまえはフランソワ”」

「うわっ 動いた!見ろよアルカ!」

「フランソワ自分で歩けるの?すごいね すごいねフランソワ!」

「“リネルが自由に動ける魔法をかけてくれたの”」

子供が最も喜びそうな表現で述べた。弟達がそれぞれの反応でもって動く人形を見つめている。これに応えるべくフランソワはくるりと回り両手を合わせ 可愛らしいポーズを取る。上から容赦無く振り下ろされる小さな手を 軽やかにかわしてみせた。

「“カルト 乱暴はだめ”」

2つになったばかりの末弟は小さな口を固く閉じ まじまじとフランソワを観察している。次なる張り手のタイミングでも図っているのだろうか。

「……ふん、どうせラジコンか何か仕込んでるんだろ」

やや離れた所で ぴこぴことポータブル型のゲームに熱中して見えたミルキはあっという間にもう11歳だ。子供騙しを素直に喜んではくれないようで細い横目とともに曲がった感想を投げてくる。リネルはころりと首を傾げ じっとミルキを見つめた。

「ミルキは近々……ホントのからくりがわかるようになると思うよ」

「どうせやるならそんなダサいのじゃなくてもっとすごいの作ってやるけどね」

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