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〈短編〉H×H

第19章 厭世主義/イルミヒソカ医者パロ/夢主看護師/無糖





「ヒソカせんせいはキライ」

「え………」

「ママはヒソカせんせいが好きみたいだけど。だってヒソカせんせいは切るんでしょう?切ったら血が出て痛いもん」

「…ユイちゃん…」

「どうせ死ぬなら痛いのはイヤ」

リネルは大きく眉間を詰める。ユイの痩せた肩を抱き口調をきつめてユイの瞳を見つめた。

「ユイちゃん、簡単に死ぬなんて言っちゃ駄目だよ。ユイちゃんはきちんと病気を治して元気になる為にここにいるんでしょう?みんなユイちゃんを治す為に一生懸命頑張ってるんだからユイちゃんだって諦めちゃ駄目。みんなと一緒に病気と戦わなきゃ」

「みんなって、だれ?」

「……っ」



思わず言葉に詰まり 何も言えなくなってしまった。リネル自身が自ら提示した「みんな」とは誰のことなのかわからなかった。

「ヒソカせんせい?さっきのせんせい?他にも検査のせんせいとか偉そうなせんせいとか、たくさんのせんせいがいるけど」

「……」

「わたし生きたいと思ってない」

「……」

「わたしは、」



思うに。単純に子供が好きで 傷付いた子供を救う手助けをしたいと思ったがゆえにこの仕事に就いたリネルは この先を聞いてはいけなかった。無垢な瞳に宿る絶望が深過ぎて 模範解答すらわからなくなってしまう。


「わたし死にたいの。どうすればラクに死ねる?」


こんなユイは初めて見た。こちらを見つめる大きな瞳には純粋な好奇心の色がある。人間として生きる上で 認めてはいけない価値観を突き付けられた今、それでも生きるべきだという己のエゴイズムを押し付ける事が出来なくなってしまった。

でもこれで、ようやく。初めから1人蚊帳の外で喚いていたのはリネルだけだったと知ることが出来た。ユイの本音を聞けたことで 晴れてみんなの仲間入りが出来たみたいだ。

ぐにゃり。と

その代償として 精神が2つに分裂する感覚を味わった。



fin
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