第19章 厭世主義/イルミヒソカ医者パロ/夢主看護師/無糖
「死ぬときってつらい?」
「それは人によるだろうし一概には言えないけど」
深い意味はなく問われた質問に答えた。ユイからは返答も先の話題もなくその場は無言に落ちてしまう。
少し感心をする。ユイは想像以上に物分かりの良い子みたいだ。今はただ大人しく、疑問も疑心も抱かずに来たるべき時を待っていてくれればいい。
◆
ここでようやく忙しなく地面を走る音が聞こえてきた。肩を上下させながらこちらへ駆けてくるリネルへイルミはじとりと視線を投げた。
「ユイちゃん!大丈夫だった?ごめんね 1人にして」
「どこ行ってたの?」
「先生……っすみません リハビリ中に転倒してしまった方がいて近場に人手がなかったもので、それで」
「そんなのどうでもいいだろ」
どうでもいい訳はないのだが。医師への反論はどんな状況下でも愚行にしかならないのは重々承知、威圧の前では言葉が出なくなってしまう。目を離すなと再度警告を残し、イルミはさっさと踵を返してしまう。
イルミの背中が完全に病院内へ消えた事を確認してからリネルはユイの前にしゃがみ、小声で問い掛けた。
「…先生何か言ってた?」
「ううん」
ユイからは何も話す気はないようだ。これもいつもの事であるし詮索する気はなかった。優しい笑顔でユイに言う。
「病室に戻ろうか」
「…」
「ユイちゃん?」
「……………」
無視なんてユイらしくない、リネルは淡い期待を抱く。これがユイの見せる初めての自我であるならば受け入れてやりたいと思った。何か話してくれるなら それまで待とうと腹を括る。