第19章 厭世主義/イルミヒソカ医者パロ/夢主看護師/無糖
「ぎゃあああああーん!うわああああーーーーん!!」
「もうお終いだよ~よく頑張ったね 偉い偉い」
「次の方どうぞ」
曜日にもよるが午前中は基本的に外来患者の対応にあたるのが常である。リネルは予防接種を受けギャン泣く子供の頭を撫でていた。次の患者を促すイルミの声は泣きじゃくる大音量に簡単に掻き消されている。時刻も正午を過ぎただろうか。それでもまだ何十組もの親子が診察を待っている訳で1人の子供を手厚くあやしている場合ではない。この辺りを上手く捌くのもリネルの仕事だった。イルミは既に別の看護師に渡されたカルテを目の前にし 次の患者を迎え入れる準備を終えている。まだ泣いている子供が診察室にいると言うのに 次の親子が入り込んでくる。
「あっ先生…昨日子供が熱を出しまして、夜の9時くらいだったかな?その時は7度5分くらいでそんなに高くもなかったんですけど、あ でもこのコ子供にしては平熱が低めで普段は6度3分くらいで。それって低めですよね?えっと、で、それから12時くらいに少し熱が上がって8度2分くらいになって 夜中の2時頃に一回だけ吐いてしまって、普段吐くことなんて赤ちゃんの時以来なかったので、とにかくびっくりしてしまって心配で その後熱は落ち着いたんですけど朝いつもより少しだけ食欲がなかったような気がして…」
間髪を入れず一息で子供の病状を話す母親の横で 当の本人はけろりとした顔で診察室を落ち着きなく見回している。今にも丸椅子から立ち上がり医療機器やベッドの上に用意してあるおもちゃ類を勝手にいじり出しそうなのでリネルの方から怪獣の人形を手にし「がおお」と笑顔で気を引いてみる。イルミは話し続ける母親の言葉を無言で聞きながら キーワードだけを手元のパソコンに打ち込んでいた。
「風邪でしょうね 一応薬出しておきます」
今日だけで100回は聞いたんじゃないかと思うイルミの診断を受け 母親は安堵の表情を見せる。もっともっとと怪獣の人形ごっこをせがんでくる子供を上手に断切れば、また次の親子がやってくる。