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〈短編〉H×H

第19章 厭世主義/イルミヒソカ医者パロ/夢主看護師/無糖


病院の夜の廊下は静かで暗く、所々に光るのは非常口案内くらいなものだ。リネルは両手に溢れるほどの論文や資料の数々を抱え速足である部屋へ向かう。深夜であるのにそこからは蛍光灯の明かりが漏れていた。腕だけは確かなあの外科医が今夜当直であるのを知った上で 神経質に白いドアを控えめにノックした。

「夜這いかい?」

「ふざけないで下さい」

舐めたことを言うヒソカはあっさりデスクから顔を上げる。リネルはこの時間になっても疲れ知らずなヒソカの顔を一瞬だけ見返した後 手にしていた重い紙束を真っ直ぐヒソカに差し出した。この頼み事も既に何度目かになる、もはや枕言葉を添える意味もないので単刀直入にヒソカへ用件を述べた。

「あれからも色々調べました。やはりオペにはリスクがありすぎます!投薬療法を行い腫瘍マーカーの結果を元に慎重に計画を立てて進める必要が」

「やめろよ 無駄な努力は」

猟奇を隠した薄ら笑いには少しも医者らしさなんてなかった。その表情は彼の反吐が出そうな胸中をありありと示して見える。リネルは思い切り眉間を寄せた。

「…先生はあのコを切りたいだけじゃないんですか」

「ウン。切りたいね」

「…っ!!あのコを何だと思っているんですか」

「ボクのかわいい玩具」

腐り切った変質的な医者は 走り書きや付箋が山ほど乗る文献の数々を蔑むように見下すだけだった。

論点の中心人物は難解な病巣を抱える5歳の財閥令嬢だ。彼女を預かったことでこの病院は医学界への話題とチャンスを握ることに成功した。彼女の治療方針はオペ択一と正式決定した訳ではないがその方向に落ちる可能性は高かった。
余命僅かな幼女の体力なんて高が知れているし のんびり治療法を模索していたら刻々と患者はあの世行きだろう。しかしそれは強行オペを行なったとて同じ事、何度どんな書物をひっくり返して調べても 彼女の虚弱な身体が負担の大きいオペに耐えられるはずはなかった。
「これは政治的なオペ」そう言い放った担当医の言葉が頭を過ぎる。それを打ち消すべく リネルはヒソカに大きく頭を下げた。

「お願いします…!先生が自らオペの危険性と打開策の必要性を一言示して下さったら、あのコは」

「しつこいねぇ」
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