第21章 引っ越し〜相澤消太〜
急に素直になった消太に首を傾げながらも「それじゃあ、行ってきます」と玄関に向かおうとする華に消太は「おい、ちょっと待て」と言ってイスから立ち上がり
棚からゴソゴソと何かを探して華に向かって投げた
「家の合鍵だ。ないと家に入れないぞ」
受け取った華は戸惑ったように消太と鍵を交互に見つめて「あ・・・ありがとう!無くさないようにする!」
大事そうにぎゅっと握ると今度こそ玄関へと向かって行った
消太の家は華の家から近かったので通学路はさほど変わらなかった
お馴染みの道を歩いていくと後ろから元気な声が聞こえて来た
「おはよう、華ちゃん。引っ越しは無事に終わった?」
「あっ、出久くんおはよう、うん。何とか終わった」
にこにこと聞いてくる出久には知り合いの家に居候することになったと話してあった
「それにしてもおじさん達も急だよね〜2人で行くなんて相変わらず仲がいいんだね」
出久とは幼い頃からの知り合いだから当然両親の事は知っているというかウチの両親は近所でも評判の仲良し夫婦だった
「まぁ、ママがパパと離れ離れになるなんて想像もつかないし、そうだろうなぁと思ってたから」
あははと笑う華に確かにと相槌をうちながら同じように笑うと出久はふと真剣な表情で華を見た
「でも、困った時は僕に言ってね?その、頼りないかもしれないけど華ちゃんの力になりたいんだ」
「出久くん・・・うん、ありがとう。頼もしい」
出久の言葉に心がじんわりと暖かくなるのを感じて華は笑った
大丈夫、きっとやっていける
この気持ちも気付かれない
一緒に住むんだからバレてはいけない
隠し通さないといけない
華は気持ちを引き締めるように前を向いた