第21章 引っ越し〜相澤消太〜
食事が終わって食器は自分が洗うと言って聞かない華に洗い物を任せて自室へとこもる
キュッと蛇口を締める音がしてパタパタと足音がするが、それは華に空けた書斎のドアの音と共に消えた
その音を聞くと消太はふぅっと息を吐きながらボフンっとベッドへと身を沈めた
初めは無理やりの同居提案だったが、決まったからにはキッチリとしたい
たった1日目なのにもう疲労が溜まった
そもそも人がずっといる空間に慣れない
「大丈夫か?俺」
ポツリと呟いた言葉はしんとした部屋へと消えて消太もそのまま瞼が下がっていった
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ふと目を覚ますと僅かに光がカーテンの隙間から漏れていた
あれから寝てしまったのだろう、朝日の眩しいカーテンを開けてのそのそとリビングに向かうとそこには制服姿の華がいた
「あっ、おはよう消太くん。コーヒー飲む?」
くるりと振り向いた華はそう言うとにっこりと笑った
「・・・頼む」
慣れない・・・朝に自分以外の誰かがいるなんて少し髪をかきあげながらイスに座ると
コーヒーの香りがフワッとしながら目の前にマグカップが置かれた
「消太くん、私は先に学校に行くけど、飲んだものはキッチンに置いててね。あ、それとこれ」
言いながらテーブルに置かれたのは四角い箱
「なんだ、これは」
「お弁当。材料があまりなかったからシンプルサンドイッチになっちゃったけど、自分の分を作ったついで」
ぽんぽんと自分のカバンを叩きながら「味の保証はないけど」と笑った
「有難いが、俺はゼリーって決めてるんだ」
「そう言ったらパパがこれを渡せって」
言いながら華はゴソゴソとカバンのポケットから一通の封筒を取り出した
取り出されて渡された封筒を絶対にロクなことが書いていないと感じながらも渋々と封筒を開けて入っていたのは1枚の手紙
ゆっくりと手紙を開くとそこには一言だけ
『食え』
ばんっと手紙を手紙を閉じてサンドイッチの入った箱を自分の方へと引き寄せる
「・・・・有り難く、頂きます。」