第21章 引っ越し〜相澤消太〜
「ふぅ、こんなもんか」
部屋を片付け出して小1時間、ある程度綺麗にした
明日着ていく制服をハンガーにかけてクローゼットに入れていると、ドアの方からコンコンと音がした
ガチャリと開けると消太くんが立っていた
「腹、減っただろう。飯出来た」
「えぇっ!?消太くんが作ったの!?」
「なんだ、俺が作れたら可笑しいか?簡単なもんだがな」
「いや、パパからよく消太くんはゼリー飲料が糧だって散々聞かされたから」
目を丸くしてる華に消太は頭をかいた
「それは俺の場合だ。別に栄養補給に都合が良かっただけだ。でもお前は違うだろう」
そう言いながら「食わないならいい」と言いながら踵を返す様子に華は慌てて部屋を出た
テーブルにはホカホカのミートソースパスタが出来ていた
「悪いな、ソースはレトルトだ。だからなんだとは言うなよ、味は確かだ」
コップにお茶を入れてくれながらそう言うと自分は冷蔵庫からゼリー飲料を取り出した
「ちょっ!・・・・待って待って!消太くん もしかして家でもそんな食事なの?」
はっと気がついたがパスタの皿は華の分しかない
パキッと蓋を開けてゼリー飲料を飲もうとする消太を華は慌てて止めた
「言っただろう、合理性に合った食事がこれだったと、いいからお前は気にせず食え」
言いながら再度飲もうとする消太の手をガシっと掴んだ
「同じ空間ににいるんだから一緒に食べてよ」
「だから食べて・・・・「同じものを一緒に食べたいのっ!・・・・寂しいじゃない」
最後の方はだんだん小さくなって消え入りそうな声だったが、消太の耳には はっきりと聞こえた
少しの間お互いに目を背ける事なく見つめ合って消太は短くため息をつくと立ち上がって食器棚からお皿とフォークを持ってきた
「ん、一緒に食うんだろう?少し寄越せ」
「・・・・!うんっ!っていうか私がいれるから貸して」
消太の言葉にぱぁっと顔を綻ばせると嬉しそうにお皿に手を伸ばして移し出した
その様子に消太は少し安堵した
何年振りかに見た彼女の笑顔
変わらないその様子に
自分は嫌われていなかったんだと
今までの疑問などは忘れてしまった