第35章 イレギュラー
それから夕方になり、それぞれの寮に生徒達が帰る頃
華もまた寮へと帰路についていた
ガチャっとドアを開けるといつものメンバーの中に見慣れない人物が混ざっていた
「やぁ、お帰り 華ちゃん」
「清十郎さん!?」
それは先日偶然に再会したかつて通っていた道場の息子でとても優しくしてくれた清十郎だった
予想外の再会に華は驚いた顔で立ちつくした
何故清十郎がこの場にいるのか理解出来なかった
当の清十郎は目の前で美味しそうに紅茶を啜っている
「あの…華ちゃん、柳さんは僕達に体術を教えてくれる為に特別講師で来てくれたんだ」
立ち尽くしている華の隣でそう出久が説明するとようやく納得した様な顔を見せた
「それならそうと言ってくれてればいいのに、相変わらず人が悪い」
華の言葉に清十郎はにっこりと笑った
「ちょっと驚かしたくて、好きでしょう?サプライズ」
「そういうサプライズはいらない」
少しむくれる様子の華にカチャリと紅茶をテーブルに置くとゆっくりと立ち上がって華に清十郎は近付いた
「僕は華ちゃんの驚いた顔を見るのが好きなんだ」
何だろう、この歯の浮くようなセリフをツラツラと並べ立てるのは本当に先程チャラさ前回だった男と同一人物なのか?
顔も違えば話し方も違う その大きなギャップに周りは混乱した
「ふふっ、清十郎さんは相変わらずだね」
そんな歯の浮くようなセリフをさらりと躱すように笑えば
「じゃあ暫くはここに通うの?」
「そうだね、1.2週間くらいかな?基本的なことばかりだけど精一杯頑張らせてもらうよ」
華の言葉に清十郎は周りを見渡した
「でもさすが雄英だね、とても反応がいいね」
ん?先程まで完封までなき叩きのめしていた男の言葉か?!と誰もが思ったがそんな事知る由もない華は清十郎の言葉に嬉しそうに笑った
「そうでしょう!?みんな強くて優しいの」
華の言葉に清十郎は目を細めた
「安心出来る場所が出来そうだね…でもまだ脆い」
最後の方は聞こえない程度に呟いた