第35章 イレギュラー
それから生徒達は一体自分の身に何が起こったのか分からなかった
それ程彼の動きは一瞬一瞬の立ち回りが早かった
気が付いたら相手の懐に入り込み脇腹に軽く拳が入るか瞬時に足を払われてバランスを崩して倒れるかのどちらかだった
「うわっ…!」
「きゃっ…!」
その様子をじーっと観察するように見つめていた人物がいた
「あれ?君達は来ないの?」
周りの生徒が転がっている中、清十郎は息切れなど微塵も見せずに服に付いた汚れを手で軽く払っていた
「真正面からいっても返り討ちだよね」
「そうだな、闇雲に突っ込んだらアイツ等みてぇになる」
ボソボソっと言葉を発したのは勢いで飛び出さなかった出久と同じく相手の動きを見極めようとずっと見ていた轟の2人であった
ジリっと出久が足を一歩引いたと同時に目に捉えていた清十郎の姿がなくなった
「えっ!?消えた!?」
「緑谷っ!後ろだっ!」
轟の声に反射的に後ろを振り向いた出久だったが遅かった
「反応は良し、だけどまだ遅い」
そう言うと背後に現れた清十郎は先程の勝己同様 後ろに手を捻って地面に押し付けた
「うわっ…!イタっ…!」
ギリっと腕を取られて痛そうに顔を歪める出久を助けようと轟が清十郎へと向かっていったが あっけなく今度は轟が地面に押し付けられる羽目になった
「…15分か、まぁまぁ遅いな」
時間を見ていた相澤は清十郎に向かってそう呟くと
「うわっ酷くない?俺1人よ?充分早いと思うけど」
相澤の言葉に清十郎は軽く自分の服の裾を正した
「んで感想は?」
「ん〜動きは全体的に悪くなかったよ?ただ…個性に頼り切ってた結果がこれかな?」
清十郎の意見に生徒達はぐっと唇を結んだ
彼の言っている事は正しいから
こんなにも個性を使わないと力が出せないのかという現実を突き付けられたような気がした
「凄く鍛えがいがあるよね、楽しみだっ!」
楽しそうに言う清十郎に相澤は「この体術馬鹿め」と零したがその言葉をスルーするように清十郎は笑った
「じゃあ、明日から基礎からビシバシ実践あるのみっ!目指せっ!基礎作りっ」
おーっと拳を上げる清十郎につられて「お…おー」と言う戸惑いながら応える生徒達は このテンションに付いていけるのかと半分心配になってきた