第35章 イレギュラー
彼の言葉に一斉に視線が華に向く
その視線の先には驚いた顔と嬉しさが混じった華の顔があった
「わぁっ…やっぱり清十郎さんだっ!お久し振りです」
「うん、久しぶりだね華ちゃん元気だった?」
「勿論っ!清十郎さんこそいつ日本に?」
「う〜ん、丁度1ヶ月前くらいかなぁ」
嬉しそうに近寄って話し出す華の顔からして昔からの知り合いのようだ
「あの、お二人は知り合いなのかしら」
頃合いを見計らって梅雨が二人にそう尋ねると華は慌てたように振り向いた
「えと、この人は柳清十郎さんって言って私が通っていた道場の師範の息子さんなの」
「初めまして、柳と申します」
華の紹介にペコリと頭を下げて微笑む姿は清潔感漂う好青年というイメージだ
「それじゃあ、僕はこれで」
そう言って立ち去ろうとする清十郎に華は慌てて呼び止めた
「えっ!?もう行っちゃうの?」
残念そうな顔を見せる華の頭にポンっと手を置いて困ったように笑った
「僕も折角久しぶりに会えたんだから話してたいんだけど これから用事があってね 暫く日本にいるからまた連絡するよ」
そう告げるとそのまま去っていってしまった
「何だかとても落ち着いてらっしゃる方ですね」
ほぅっと頬に手を当ててそう零した百々に「確かに、ウチのクラスの男子とはまた違う魅力があった」
ウンウンと頷きながら同意するお茶子を見遣りながら華は清十郎が去っていった後を見つめた
「華ちゃん、もう少し話てたかったんじゃない?」
首を傾げるように聞いてくる梅雨の言葉に華はフルフルと首を振った
「いいの、また機会があれば会えるだろうし それに…美味しいクレープには勝てないもん」
「そうこなくっちゃ!よ〜しっ!気を取り直して突撃だ〜っ!」
梅雨と華の会話に便乗するように三奈が元気よく歩き出したのでそれに続くようにお店へと向かった
新しく出来たクレープ屋さんは種類も多くてどれにしようか迷った
結局無難にイチゴが沢山乗ったクレープを頼んで食べた
イチゴはとても甘酸っぱくて美味しかった だけど華にとって友人と休日に食べるという事だけで美味しさが増した