第35章 イレギュラー
「おい、前見て歩けよな」
「あっ、ごめんなさい」
ぶつかったのは何だかガラの悪そうな2人組だった
「それで謝ったつもりかよ 誠意が足りないんじゃないの?」
隣にいたツレがジロジロと三奈を見ながら笑った
「あの…ぶつかったのはこちらの落ち度だし誠意が足りないならもう1度謝罪しますけど…」
何だろう、とにかく早くこの状況から去りたかった
謝罪が足りないというのならさっさと謝罪してこの場を去りたかった
この人達が纏っている空気は嫌いだ
「そうだなぁ、ちょっとばかし慰謝料くれたら誠意として受け取ってやるよ、俺ってば寛容〜」
そう言いながら三奈に手を伸ばしてくる仕草に思わず華は投げ飛ばす構えを取ったがそれはあと一歩で踏みとどまった
「失礼、女性が怯えてるように見受けられるんですが」
「あぁ?何だよアンタ」
「あっ!」
華が声を上げたと同時に背後から
手を伸ばしてる男の人の肩をポンっと叩いたのは今時珍しく黒髪短髪で少し目がたれ気味の男がニコニコと笑っていた
「先程から拝見していたのですがぶつかったのはこちらのお嬢さんではなくてアナタの方だったように見えましたが?」
「…なっ!?」
そう、彼女が後ろ向きで歩いてるのをいい事に人に紛れてワザとぶつかってきたのだ
「なっ…何デタラメ言ってんだアンタ!証拠でもあるってのかよ」
今度はタレ目の男性に食ってかかる様子を男性は涼し気に見つめていた
「証拠ねぇ…あぁ、それならほらあちらに監視カメラがあるので確認してみましょうか?」
ほらっと男性が指を指した先には監視カメラのランプが光っていた
「…もし、あのカメラにアナタがワザとぶつかってる証拠が出たら…それ相応の誠意を見せていただけるんですよね?」
そう言いながらニッコリと笑う姿にガラの悪そうな2人組は後退りしながら慌ててその場から逃げていった
「さてと、大丈夫だったかい?」
あっと言う間に対処してくれた事態に三奈はポカーンとした表情をしていた
「三奈ちゃんっ!華ちゃんっ大丈夫?」
後ろからバタバタと梅雨たちがかけてくる音に三奈ははっとした様に頭を下げた
「あ…あのありがとうございましたっ!」
「気にしないで、誰だって美味しいものには気が緩むものだから…ねぇ華ちゃん」