第34章 意外な才能
そういう訳で私は普通科の寮の前…ではなくヒーロー科の寮の前に立っている
結局、私の必死な抵抗は報われることなく今に至る
幸いクラス自体は変更にならなかったのが救いだ
これからはヒーロー科の寮から普通科クラスへと通う
なんともややこしい
だけど元々ヒーローの素質がない個性なのだからクラスが変わっても困る
取り敢えず 今日から新しく生活を始めないといけない場所に大きく深呼吸してドアを開けた
「あっ!来た来た待ってたよ〜」
ドアを開けるとすぐにヒーロー科の生徒が出迎えてくれた
「あの…御世話になります」
「何を言っているんだ如月さんっみんな一緒に入寮したんだからみんな対等だ!」
ビシリと言う飯田くんは なぁみんなとぐるりと見渡した
「そうだよ〜みんな同じなんやから仲良くしよう」
言いながら麗日が笑って手を引いてくれた
「それにしても違うクラスのヤツがいるのって何だか新鮮だなっ」
そう言って笑う切島くんに「わたしも変な感じ」と言って笑い返した
「でも華ちゃんが何で僕達の寮に?あんまり相澤先生教えてくれなかったんだよね」
生徒達には事前に別のクラスから1人寮だけ加わると聞いていた
それが何故華なのか聞いても本人に聞けと面倒臭そうに言われた
「あぁ、それは私も詳しくは聞かなかったんだけど私と出久達が幼馴染って事とみんなと顔見知りっていう点で決まったみたい」
変に知らない人よりはいいだろうって事みたいだよと付け加えると周りから へぇ〜と納得した声が聞こえた
「ともあれ、華ちゃんとずっと一緒に過ごせるなんて嬉しいな」
にっこりと笑う出久につられるように華もへにゃっと笑った
「私も!出久と沢山いられるのは嬉しいっ」
そう 元々は出久と離れるのが嫌で一緒に入った高校だ
この状況は華にとっては願ってもない事だった
「ねぇ、緑谷ちゃん、私達も華ちゃんが来てくれたのはとても喜ばしい事なんだけど…」
ケロっと出久に近付きながら蛙吹は困惑した表情で彼を見た
「え?蛙吹さん?何かあった?」
蛙吹の表情に出久は少し焦ったように蛙吹を見返した
「あったというか…ありそうというか」
歯切れが悪そうな蛙吹はチラリとある人物を見た