第30章 旅立ち~相澤消太~
「なんだ、お前らも来てたのか」
そう聞こえた声に出久や梅雨が振り返ると そこにはクラスの担任の相澤が立っていた
「「相澤先生」」
驚いた様に名前を呼ぶ生徒の横をスタスタと横切れば迷うことなく華の元へと向かった
「ほら、忘れ物 取りに行ってやったぞ」
「ありがとう、消太くん」
「普通、携帯忘れるか?」
「だって他の荷造りで頭一杯だったんだもの」
言いながら携帯を受け取りながら当たり前のように会話をする2人を見て出久は口をパクパクしていた
「あ…あの、上手く状況が分からないんだけど」
じーっと凝視するように見る出久の視線に気が付いたかの様にぽんっと手を叩いてにこっと笑った
「えーっと紹介します 相澤先生です」
「知ってるから!」
おどけるように告げる華に出久は思いっきり突っ込んだ
「だよね~ あのね、簡単に言えば私のパパと消太くんが先輩後輩の関係で昔からお付きあいがあったの」
「それで華がこっちに残るっていうから俺に預かってくれと頼み込まれたんだ」
「そ…それなら言ってくれたら良かったのに」
「だって仮にも先生と生徒だし、バレたら問題になるじゃない?」
確かに華の言うことも最もだと出久は思った
だから彼女は頑なに知り合いにお世話になってるとしか言わなかったのだろう
華と消太の関係にほっとしながらも出久は再び華を見つめると少し頬を赤くしながら口を開いた
「それで華ちゃんっ!こっちに帰って来たら僕とお付き合いを考えて…」
「おい、そろそろ行かないと乗り遅れるぞ」
またもや消太の被せるような声に出久はガクっと肩を落とした
「えっ!?あっ本当だっ!それじゃあ出久くんに梅雨ちゃん、来てくれて本当にありがとう 嬉しかった」
掲示板の時刻を確認すると華は梅雨達に向き直り、ぎゅっと二人の手を握った
「向こうに行っても私達はお友達よ 華ちゃん」
「何かあったら、いつでも言ってね」
勿論と笑顔を交互に向けると華は今度はくるっと消太の方へ体を向けた