第30章 旅立ち~相澤消太~
その音に反射的にガバっと消太は飛び起きてしまった
じーっとドアを凝視しながらも自分の鼓動が大きく鳴っているのに気が付いた
まさかな、そんなわけない、先に寝たのだろう?
ぐるぐると頭の中を駆け巡るが、再度 小さな音でコンコンっと音がするものだから慌てるようにドアを開けた
ガチャリと開けた先には枕を持った華が立っていて
ぎゅっと形が変わる程抱き潰していた
「ど…どうした?」
出来るだけ平静を装うように口にした言葉に華は言いにくそうにモゴモゴと話した
「あの…明日お互いが寝坊しちゃわないように一緒に寝た方が合理的だと思うの!」
まさかここで合理的云々持ち出してくるとは思わなかった
これは俺に覚りを拓けというのだろうか?
そう自分に葛藤しながらチラリと華を見やると
何だか妙にキラキラした目で見上げてくるから力が抜けた
気を取り直した様にひと呼吸つくと消太は華を見下ろして笑った
「そうだな、合理的だな」
そう言うと どうぞと言う代わりにドアを大きく空けてやれば華は嬉しそうに部屋へ入りベットへボスンと飛び乗った
その隣にゆっくりと腰を下ろすと「寝言言うなよ」と僅かに笑った
「い…言わないし!」
消太の言葉に言い返すと消太の枕の横に自分の枕を置いてモソモソと布団に潜り込んだ
「ちゃんと肩まで布団被らないと風邪引くぞ」
そう言いながら布団を華の首もとまで掛けてやれば消太は満足そうにポンポンと布団を叩いた