第30章 旅立ち~相澤消太~
「…え?」
消太の思いがけない提案に華の目は大きく丸くなった
ただ、もう少し消太と話がしていたかった傍に居たかった
その言葉を口にしていいのかどうか迷っていたら消太からの言葉に分かりやすいくらいに焦った
「あっあの!その…!」
「言っておくがお前の想像してるような意味じゃないからな」
焦っている華を横目に飲み終わったコーヒーのカップを2つキッチンのシンクに置くとにやっと笑った
「ワザと意味深に消太くん言ったでしょ?」
「勘違いする華が悪い 俺はただお互い寝坊は避けたいから同時に寝ましょうって言っただけで」
「寝ないしっ!先に寝るもんっ!」
そう言うと華は顔を真っ赤にしてバンっと自分の部屋のドアを締めた
その様子に可笑しそうに笑いを堪えて消太も自分の部屋に入るとボスンとベットに沈んだ
「…一緒のベットになんて眠れるわけないだろ…」
ポツリと呟いた言葉は暗闇へと消えていく
今はまだそんなタイミングではないことは分かっている
でもいつかは華のあの細い腰を引き寄せて甘い声を聞けるのかと思ったら胸が震えた
「卒業まで後2年、長いな…」
それでも華が消太を想い続けていた月日を考えると短い事この上ない
そうは思うけど、消太にとってはとてもとても長く感じてしまった
小さくため息をつくとちゃんと寝ようとモソモソと動き出した時だった
コンコンと小さく音が聞こえた